topreviews[WATARASE Art Project 2007/群馬・栃木]
WATARASE Art Project 2007

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1.仁科力蔵「Landscape −水路−」
2. 仁科力蔵「Landscape −水路−」(一部)
3.
石材工房跡 外観

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神戸(ごうど)−−川の流れに寄り添うように

花輪を後にした列車は、中野、小中といった集落を経て神戸駅にたどり着く。
神戸駅は地元出身の星野富弘の作品を展示した富弘美術館や、草木ダムの建造によりできた人造湖である草木湖の最寄り駅として知られ、休日を中心に多くの観光客でにぎわっている。
また、付近一帯は石材業が盛んであり、付近より産出されるみかげ石を加工する工場が数多く見られる。
ここ神戸では、神戸駅の駅舎に細井呂実の手をモチーフとした平面作品が展示された他、現在は空き家となっている旧石材工房に作品が展示された。

神戸駅から歩いて10分ほど、渡良瀬川沿いの小道を進んだところに、今回の展示会場となっている石材工房跡がある。
現在は空き家となっているが、一角に放置された石材や事務室内に残された張り紙などが、操業当時の面影を伝えている。
ここでは、8月25・26日にパフォーマンス「モールス」が行われた他、コバヤシ、仁科力蔵、田中健吾の作品が展示された。
コバヤシ、仁科の作品は、それぞれ工房の建物を1棟ずつ使用し、内部にインスタレーションを展開している。
周囲は通行量もまばらで、静寂があたりを支配している中、2人の展示を観ていると、まるで時間が止まったかのような感覚に陥る。
特に仁科の作品「Landscape -水路-」は強く印象に残った。
この作品は、床の溝に水を流し込み、その周りに水辺の風景を描いた絵画や丸石、角材を組んでつくられた工作物などを設置したインスタレーションである。
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4.田中健吾作品 展示風景
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5.石材工房跡の脇を流れる渡良瀬川の流れ
作品を観ていると、溝の中を流れる水の流れが川に、その周囲の工作物や工場内に残された突起や階段などが建物のように見え、まるで工場の中にもうひとつの世界が構築されているかのように感じる。ただ、点在している丸石を観ていると、一見そこが川原のように見えるのだが、よく観ると、その周囲には水の波紋のような白線が描かれ、そこが川の中のようにも感じられる。そこで工房の建物全体を見渡すと、作品自体がまるで水没した都市のようにも見えてくるのだ。
そこに窓や入り口から光が差し込む。この光景を観ていて、僕はある種の神々しささえ感じたのである。
そして、この工房でのかつての営みに想いを馳せる。川に寄り添い、川と共に歩んできた人々の営みの跡が、僕には何とも美しく思えた。

また、工場前には、田中健吾による橋をモチーフにした作品が展示された。
川に架かるのではなく、川に平行に架かる橋。傍らを流れる渡良瀬川のゆるやかな流れとともにその橋を観ていると、それは川の上流域と下流域との地域のつながり、人のつながりを示唆しているようでもあった。

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