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シンプルな中にも日本家屋らしい美意識を感じさせる旧今泉嘉一郎邸では、角貝絵美によるインスタレーションや持田加奈子の日本画が展示された。
角貝は、戸を締め切って暗くした和室の入り口の畳に足の先の写真を設置した。暗闇の中、ちょうど足先の写真が見えるところだけ光がさしこむようになっていて人の気配のようなものを感じさせる、日本家屋の特性を活かした展示になっている。
また、2階に展示した持田の作品は、日本画の様式を活かして今を生きる人々をユーモラスに描いている。そうした作品を歴史を刻んだ古い日本家屋の中で見るというシチュエーションが興味深く感じられた。
一方、1931年(昭和6)に建てられた旧花輪小学校の木造校舎は、2001年(平成13)に廃校となった後も地元の人々の尽力によって旧花輪小学校記念館として活用されている。
ここでは、玉木直子や門眞妙の作品が印象に残った。
玉木の作品は、校旗をイメージした図柄と草花や衣服とをフロッタージュの技法により重ね合わせたものである。校旗の図柄は実際の花輪小学校の校旗ではなくオリジナルということだが、中央に桜の花をデザインしたそれは花輪小学校のそれと似通っており、そこに草花やレースの柄などが重ねられている様は、この花輪という土地に心を重ねていこうとする玉木自身の姿を浮かび上がらせる。
また門眞は、2階の教室の窓のところに薄い布地に描いたドローイングを吊るした。
布地の向こう側には外の景色が透けて見え、門眞によって描かれた花輪の風景と重なることで、ここ花輪での自然の営みがより豊かに感じられる。そしてそれを教室の中から見ることで、この小学校が見てきた花輪の歴史が浮かび上がってくるように感じられるのだ。
そんな中、向かって一番右側に展示されたドローイングには東京の景色が描かれている。そのドローイングには、玉木と同様に東京からやってきて花輪に心を重ねていく門眞自身の姿が表されていたように思う。
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4.持田加奈子作品 展示風景
5.門眞妙「山のはなし」(一部)
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6.門眞妙「山のはなし」展示風景
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