topreviews[小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展/東京]
小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展
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1.書店スペースから見た展示風景
2.
ブックギャラリー ポポタム外観


 
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3.ニョロのハギレでお絵かきのコーナー
4.アミガサニョロ
5.大ニョロさん
6.ニョロの巣とニョロ
7.ニョロの木
8.ニョロ、ポポタムへ
9.ニョロ、ポポタムへ
10.展示風景


「ニョロ」がつなぐ時・人・街 / ニョロ展

一方、自由学園明日館にほど近いブックギャラリーポポタムでは、関野宏子の個展が同時期に開催された。
ポポタムは絵本を中心とした古書やインディーズブックなどを主に扱う書店であり、奥のスペースのギャラリーでは展覧会を積極的に開催している。
ポポタムは手前と奥で仕切られていて、手前が書店、奥がギャラリーになっているが、今回の「ニョロ展」では、明日館に比べてよりカラフルな「ニョロ」たちが奥のギャラリースペースを中心に展示されているとともに、壁には大きな白いフリースにフリースの端切れを子どもたちが思い思いに貼り付けた「ニョロ壁画」が張られている。
奥のギャラリースペースに入ると、壁といわず床といわず多数のニョロが展示されているのだが、その中でも、ギャラリースペースに入ってすぐのところに設置された「アミガサニョロ」が特に目をひいた。
これは、上から吊るされた電球に合わせてちょうど笠のように設置された作品だが、ニョロの網目が電球に照らされて天井に大きく網模様が映し出される。
関野の作品の中には、ヘビやトカゲを思わせるニョロのほか、このような網模様や突起といったモチーフを用いた作品も多い。これらは何やら関野自身の内面の意識の現れのようにも感じられるのだが、フリース特有の形状や感触のやわらかさは、意識がどこかでつながりあうような心の安らぎを感じさせる。
そして、今回のように網模様が天井に大きく広がる様を観ていると、関野の意識に包み込まれるかのようだ。そしてその中で、多数設置されたニョロを観ていたり触ったりしているうちに、さながらおもちゃ箱の中で遊ぶように関野のニョロの世界を濃密に感じることができる。

そしてその奥のギャラリースペースからは「長ニョロさん」が書店スペースまで飛び出して設置されており、書店スペースの椅子には人の背丈くらいある「大ニョロさん」が椅子に腰掛けている。
この「大ニョロさん」を観たとき、僕は驚いた。書店の中で一休みするお客さんよろしく椅子に腰掛けるその姿は、まるで奥のギャラリースペースのニョロの世界からそのまま飛び出してきたかのようだ。そして、書店という日常の空間の中で「大ニョロさん」を観ていると、まるで実在する動物であるかのように感じられるのだ。
明日館では、会場が元教室という特性からか、自分の子どものころといった過去の思い出や空想の世界といった、僕たちの日常から離れた別世界のように感じたのだが、ここポポタムでは、日常生活の中にニョロが入り込んだような、日常の世界とニョロの世界とが書店スペースを介してつながりあうような感覚を味わう。

そして、そうした印象をより強めているのが、書店スペースとギャラリースペースとの間の小空間で上映されされていた、ニョロを使った映像作品「ニョロ、ポポタムへ」である。
これは、ニョロたちが明日館からポポタムまで移動するところを人形アニメーションの要領で映像化したもので、撮影にあたっては、子どもたちの協力も得て、実際にニョロを少しずつ動かしながら撮影された。
冬の柔らかな日差しを浴びて住宅街の中を進むニョロたちは、その人形アニメーション特有のカクカクしたコマとコマの間に僕たちの想像が入り込むことにより、まるで生きているかのような生命感を感じさせる。「こんな生き物が実際にいたらいいな・・・」と夢想させるのだ。
また、都会の真ん中でありながら生活感あふれる西池袋の街並みは、ニョロたちと絶妙にマッチする。ニョロたちが息づく映像の中の西池袋は、ニョロたちにあわせたかのようにゆったりとした時間が流れ、大都会の中のオアシスのような、安らぎを感じるのだ。

僕たちの日々の生活は、どうしてもいろいろな呪縛にとらわれ、現実に流されてしまう。
しかし今回の2つの展示は、そうした呪縛から解き放ってくれるとともに、僕たちの想像力をふくらませ、僕たちの感じる世界を豊かにしてくれる。
自由学園明日館の展示は、自分自身の内面世界を。
ブックギャラリー ポポタムの展示は、外の世界を。
そして双方の展示を見ることで2つの世界はゆるやかにつながりあい、ほのかなぬくもりを与えてくれるのだ。
2月の寒空の中、それはとてもいとおしくかけがえのないものように感じられた。

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関野宏子/ニョロ展

ブックギャラリー ポポタム(東京都:西池袋)
2007年2月6日〜10日


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