topreviews[小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展/東京]
小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展
人と街とをつなぐもの
TEXT 横永匡史

池袋というとあなたは何をイメージするだろうか?
ある人はサンシャインシティをイメージするだろうし、ある人は駅周辺の大型百貨店をイメージするだろう。また、北口周辺に広がる歓楽街をイメージする人もいるかもしれない。
だが、池袋駅西口の東京芸術劇場やメトロポリタンプラザが立ち並ぶエリアから目白方面にほんの5分も歩くと街の様子は一変する。道は狭く入り組み、都会の喧騒から離れた閑静な住宅街となっているのだ。ついいましがた歩いてきた高層ビル群周辺と比べると、まるで別世界に迷い込んだかのような錯覚に陥る。
そのような中、自由学園明日館とブックギャラリー ポポタムを会場として2つの展覧会が開催された。

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創造をひろげる部屋/「class room 2」展

住宅街の中を歩いていくと、年輪を感じさせる建物がちらほらと目に付く。ここはかつて「池袋モンパルナス」と呼ばれた地域にもほど近く、心なしか生活感の中にも文化の香りを漂わせているように感じられる。
そのような中に、縦に大きくとられた幾何学模様の窓が印象的な自由学園明日館がある。

この自由学園明日館は、もとは自由学園の校舎として建てられたものだが、旧帝国ホテルの設計などで知られるフランク・ロイド・ライトの設計になる建物は、簡素なシルエットの中にも開放的な雰囲気を漂わせ、周囲ともしっくりと調和している。
1921年に建てられてからすでに80年以上が経過しており、その歴史的価値から国の重要文化財にも指定されているが、保存修理を経て、現在は各種公開講座が開催されている他、会合や結婚式、コンサートなど多目的に使用されている。
ここでは、この自由学園明日館に魅せられた二人のアーティスト、小林真理と関野宏子による展覧会が明日館の大教室で開催された。
1.自由学園明日館 外観
2.展示風景
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3.小林真理「property」
4.
小林真理「博物誌」
5.
小林真理「博物誌」


交配がいざなう未知の世界(小林真理)
小林真理は、主にドライポイントやエッチングといった銅版画の技法を用いて、動物に植物や他の動物、あるいは建物などを融合させた想像上の生き物を描く。
こうしたものにはどこかに不自然さやある種の気持ち悪さを感じさせるようなものも少なくないが、小林の手になる生き物たちは、そうした違和感を感じさせない。生物学的にはどう見てもありえない形状なのだが、「こんな生き物もいるかもしれない」と思わせる不思議な説得力がある。それは、ドライポイントによって生じるにじみに、和紙や色鉛筆による淡い彩色などが組み合わされることによって、生き物たちに温かみが感じられるからだと思う。そうした温かみが生き物たちに生命感を与えているように思われる。
また「博物誌」シリーズなどは、そうした生き物たちに、エッチングで描かれたルーン文字を思わせる架空の文字が組み合わされ、架空の国の古い博物誌のように仕立てられている。観ているうちに、何だかファーブルの昆虫記やダーウィンの動物記を読んだ子どものころのワクワクした気持ちを思い出させてくれる。
そして、心はこのような生き物が存在したであろう過去の架空の国へと飛んでいくのだ。


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小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」

自由学園明日館(東京都:西池袋)
2007年2月6日〜10日

関野宏子/ニョロ展

ブックギャラリー ポポタム(東京都:西池袋)
2007年2月6日〜10日


関連リンク
reviews/さわって楽しむ現代美術展
 
著者プロフィールや、近況など。

横永匡史(よこながただし)

1972年栃木県生まれ。
2002年の「とかち国際現代アート展『デメーテル』」を見て現代美術に興味を持つ。
現在は、故郷で働きながら、合間を見て美術館やギャラリーに通う日々。




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