topreviews[小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展/東京]
小林真理・関野宏子 二人展「class room 2」+関野宏子/ニョロ展
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視覚と触覚でひろがる「ニョロ」の世界(関野宏子)
一方、関野宏子は色とりどりのフリースなどの布地を縫い合わせて「ニョロ」というヘビのようにもトカゲのようにも見える不思議な生き物をつくる。
室内には、こうした「ニョロ」の他、平べったい「ニョロあみ」「ニョロハス」や「ニョロの巣」「ニョロクッション」、「ニョロ」がユーモラスに動き回るアニメーションが上映されている「ニョロテレビ」などの作品が設置されている。
平面作品にしろ立体作品にしろ鑑賞者が作品に直に触れることを想定していない作品が多い中、関野のつくり出す「ニョロ」は鑑賞者が触ることはもちろん、それを自在に使って遊ぶことまであらかじめ想定されている。
実際鑑賞者は、「ニョロ」に触ってもよいとわかると思い思いに「ニョロ」に触って感触を楽しんでおり、子どもたちなどはいくつもの「ニョロ」を組み合わせたり、「ニョロ」の穴に自分の手や首を突っ込んだりして楽しそうに遊ぶ。その姿は、アートを鑑賞するというよりも、おもちゃとじゃれあっているといった方が近い。その意味ではこれら一連の「ニョロ」は、アート作品というよりはおもちゃに近いのかもしれない。
しかし、実際の「ニョロ」を目の前にすると、そのようなことはどうでもよくなってしまう。フリースのもつやわらかな感触やあたたかみのある色彩に触れたとき、僕たちの心が解き放たれたかのように感じる。そしていつしか「ニョロ」が心の中に入り込み、「ニョロ」の世界がどんどん広がっていくのだ。
また、室内にはミシンも持ち込まれ、「ニョロ」の公開制作や「ニョロ」のオーダーメイドの受付なども行われていた。新しい「ニョロ」が鑑賞者の声などを聞きながら次々に産み出されるところなども、「ニョロ」の世界が広がるのを助けている。

“自由”が育むイマジネーション

二人の作品を観ていて、ふと自分が子どものころを思い出した。

そのころの幼い僕は自分のごく周辺のことしか知らず、その先には未知の世界が白地図のように広がっていた。
家族旅行などで遠くへ旅したり自分の行動範囲が広がるごとに起こる新たな発見。その度に、心の白地図にどんどん新たなことが書き込まれ、自分の中の世界がどんどん広がっていくときのワクワク感。
あのころは、世界がどこまでも果てしなく続いていると信じていた・・・。

二人の作品に共通するのは、子どものころにもっていたような、世界がどんどん広がっていくワクワクした気持ちを思い出させてくれることだ。
作品に触発されて自分のイマジネーションが刺激され、「こんな生き物がいたらいいな」と空想がどんどん膨らんでいくのを感じる。
この自由学園の教育は、いわゆる受験対策のような詰め込み式のものではなく、子どもたちの創造性や自主性を育てることを基調としているという。その意味で、鑑賞者の想像力を膨らませる二人の展覧会がこの自由学園明日館で開催されるのは大変似つかわしく、必然の帰着だったようにも思う。
フランク・ロイド・ライトは、この自由学園の理念にいたく共感してこの明日館の設計を手がけたというが、彼の設計による幾何学模様に彩られた大きな窓から差し込む光が、こうした想像力の発露を祝福しているように感じられた。

1.関野宏子「長ニョロさんの子ども」「ニョロの巣」
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関野宏子「長ニョロさん」
3.
関野宏子「ニョロクッション」「ニョロテレビ」
4.ニョロ制作用のミシン
5.展示風景
6.展示風景



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