toppeople[稲垣智子インタビュー]
稲垣智子インタビュー
《波》2007 パフォーマンス/ビデオインスタレーション

仏教に対する興味


藤田
この5年間で稲垣さんが変わったと思うことがありますか?
社会は相変わらず不景気だし、変わってないような、変わったような。

稲垣
あります!

藤田
どこがですか?

稲垣
まず、最近ずっと仏教に興味があります。作品には出てきませんが。

藤田
座禅に行ってましたよね、どのくらいになりますか?

稲垣
昨年はドイツにいたので行っていませんが、3年前くらいから色々なところに足を運んだり、実践しています。

藤田
これから仏教系は出てくるんですかね?

稲垣
それはないと思いますよ(笑)。

藤田
とはいえ、例えば稲垣さんの作品を「日本人の感覚じゃない」と言う人もいますよ。
多感な学生時代をイギリスで過ごしたから、と私は思っています。
だからいまは仏教のことが作品に出ることはなくても、これからうっすら影響として出てくるんじゃないでしょうか。

稲垣
そうかもしれません。
これまでの作品に比べて、新作《Pearls》(参考/下記掲載画像《Pearls》(部分))は表面的に柔らかくなったと自覚しています。

藤田
柔らかく?
少し分かりにくい気が、私にはしました。

稲垣
「分からない」と言われてもいい、と思ってつくりました。
しかし、普段アートをあまり見ない友人が見てくれて、表面的にはネガティブな要素を含む作品なのですが、作品の本質はネガティブではないことに気づいてくれて心を打つ作品だと言ってくれました。


藤田
私が今年5月のPEELERでレビューを書いていますが、シーンひとつひとつでしか、作品を見ることができませんでした。
天井につなげられているパールのつぶつぶ、一粒一粒と、シーンひとつひとつは、重なりましたが。

稲垣
貝の中に異物を押し込めて、きれいなパールはつくられます。
そしてパールは、買ったとたんに傷がつきやすいから価値が下がるそうです。
また、パールのネックレスのように人と人が隣あっている状況、ささやかに擦れているという状況。
その状況が人間社会にも似ている、満員電車での隣の人のような、繋がっていないようで繋がっている関係、身体的は触れているのに気にしないような距離感。
そういった状況に焦点を当てました。


《Pearls》(部分)
 
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