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ベルリンアート便り
   
 
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1.インフォメーション・カウンター2.ミュンスターにはウサギがたくさんいます。







 彫刻プロジェクトとはいえ、映像を使った作品もある。
ガイ・ベンナー(写真3,4)は、税務署内の会議室にモニター付きのエアロバイクを並べる。映像は「彫刻プロジェクトを観に行く為に、彫刻を壊しました。」というコミカルな内容。作家と子供たちが、とある美術館のレディ・メイド作品が並ぶ展示室で、ピカソの「雄牛の頭」、デュシャンの「自転車の車輪」、ティンゲリーの自転車式機械を組み合わせて自転車を作り、自転車の街・ミュンスターをかけまわる。

 旧市街を抜けると、広い宮殿庭園やアー湖があり、青と緑が広がる。このあたりはやはり、自然を意識した作品が多い。
マリア・パスク(写真5,6)は、草むらにテント小屋を点在させる。ここでは、週に一回コミュニケーションや宗教などをテーマにレクチャーを行なわれ、ディスカッションの場として機能させる。ハード面からではなく、人々の意識といったソフト面から新しいタイプの街づくりを考えていこう、という試みのプロジェクトである。

スーザン・フィリップス(写真7,8,9)は、薄いブルーに塗られた橋の下で、自分の歌声を使ったサウンドインスタレーションを行う。橋の両側に設置されたスピーカーからは、デュエットのバルカローレ(ベネチアのゴンドラ小木の舟歌)が響き渡り、聴くものを素直に魅了する。

パヴェウ・アルトハメル(写真10)は、人通りの少ない草むらにただ細い道を作る。静かな緑の中を一人で歩いていくと、メディテーションにも似た心地になりそうだ。

アネッテ・ヴェルマン(写真11,12)は、美しいアー湖のほとりに工事現場を作る。それは、架空のデベロッパー会社が、都市のレクリエーション施設として最新式のスパとホテルの建設が行っている、という設定で皮肉に満ちている。

テュー・グリーンフォート(写真13,14)は、アー湖の水質を題材とする。レクリエーションの場となっているこの湖は、実は化学物質によって汚染されており、遊泳が禁止されている。専門家と共に作られた銀色のタンクが、水中に含まれるリン酸塩を中和する物質を放出している。

 最後にもう一つ、ブルース・ナウマン(写真15,16)。大学のキャンパス内に突如現れる、白い逆ピラミッド。なぜ今ここにあるのか…と考えずにはいられない。
実はこの作品は、第一回目の際に設置の許可が下りず、今回晴れて実現されたのだそうだ。
街には、過去の作品も40個ほど永久設置されている。それらも同時に見てまわると、「彫刻」の概念や、屋外設置の意味がいかに変化してきたか、ということが手に取るようにわかるだろう。この作品も、彫刻の歴史を感じさせる一つである。

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3.ガイ・ベンナー/自転車をこぎ続けないと映像は観れない4.会場は税務署の一部5.マリア・パスク/監視スタッフもピクニック中6.中央テントの中はライブラリーに7.スーザン・フィリップス/スピーカーは片側に2つずつ設置されている8.橋の上から見える景色9.橋の外観10.パヴェウ・アルトハメル/なかなか見つけにくい小さな道11.アネッテ・ヴェルマン/ 工事現場に手書きの看板12.横に咲く花すら作品に見える??13.テュー・グリーンフォート/朝から晩まで機械は稼働している14.タンクに貼ってある説明図と文15.ブルース・ナウマン/ 傾斜の緩やかなピラミッドのよう16.作品の真ん前には校舎

 <art and public> がテーマと一口に言っても、そのアプローチの仕方はそれぞれ異なる。単に場に調和する「サイト・スペシフィック、ミュンスター・スペシャル」ではなく、特定の場を超えた普遍的な部分を持った作品が多い。
ミュンスターは第二次世界大戦で焼け野原になり、戦後の都市計画で築かれた街だ。今は都市計画も一段落し、伝統的なドイツを再現した一観光都市のような印象を受ける。都市とアート、その関係は多くの国で模索されている。彫刻プロジェクトが半ば「伝統行事」と化すのではなく、アート側からの「片思い」に終わるのでもなく、街やそこに住む人々と彫刻プロジェクトが互いに触発し合うような関係が生まれていくことを願う。

 
 
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