topspecial[アートの近所〜スウェーデン Algarden]
アートの近所〜スウェーデン Algarden

名称:(オルガーデン)
住所:,
   
電話:+46 33-419860
FAX:+46 33-132758
URL: http://www.algarden.se/
Email:info@algarden.se
   
   

「アートを味わう」現場、
オルガーデンにて


私池田朗子は、今年(2007年)の2月の末から4月の初めまで、スウェーデンのオルガーデン(Algarden)というアーティストランスペースにて滞在制作を行った。北欧の小さな町にあるレジデンスであったが、地域の特性や風習、他の滞在作家との交流、ワークショップなど、刺激と実りのあった6週間をレポートしたい。
 
  オルガーデンでの設置中の池田朗子。
会場に300機もの紙飛行機を設置した。3メートルのはしごを使い一人で設置。設置だけでも四日間かかった。


今年(2007年)の2月の末から4月の初めまで、スウェーデンのボラス(Boras)市にある、オルガーデン(Algarden)というアーティストランスペースにて滞在制作を行った。
スウェーデンの首都、ストックホルムからは、南西方向へ電車を使って、5時間以上(特急などにより時間差有り)かかる。私は関空を出発し、アムステルダム経由で、第二都市のヨーテボリの空港から、車で40分程で到着した。
今回の滞在は、前回の「アートの近所」でレポートした デンマークのET4Uでのレジデンス中に同施設へ訪問した事がきっかけとなった。すでに2年以上前の事である。

オルガーデンは、プリントメーキングのワークショップ(工房)と、ギャラリー、ゲストルーム、コンピュータールーム、アトリエを備える。周りには、スポーツスタジアムやショッピングモールがあるのだが、元々は、貯水池とそれらを管理する人たちの使用施設、美術館であり、現在も市民の憩いの場である施設内はタイムトリップをしたように落ち着いた空気が流れている。もちろん、私も滞在中にそれらの施設をフル活用した。朝食をとり、そのままワークショップや、アトリエに移動。メンバーが多いときは昼食の準備、コーヒーの準備などを手伝い、コンピュータールームで日本からの連絡を確認したり、データーを整理したり。就寝の時間まで制作できる環境に身を置けるというのは、レジデンスの醍醐味である。スウェーデン語は全く理解できなかったが、それでも自然にメンバーやスタッフの協力を得る事が出来、非常に居心地よい環境であった。

オルガーデンの歴史は、1973年からスタート。創始者であるビヨーン()がプリントメーキングの為のワークショップ(作業所)を車工場の隣で始め、プレス機等の機材を、他の作家や、アマチュアの利用者とシェアする事から始まり、2000年にボラス市所有の現在の施設へ移転しメンバーと協力し合い改装し、活動を続けている。現在、ビヨーンを含む三人の常駐スタッフと130人のメンバーが在籍し、自治体、地域の財団、また文化庁などからの助成とメンバーシップがその活動を支えている。メンバーは、展覧会を国内外で行うベテランから、学生、アマチュアまで様々。定期的に行われるミーティングはもちろん、ゲストも交えてのランチやお茶の時間にお互いの制作状況を報告しあう機会が多く、若い作家がベテランに今後の制作活動の相談をしているという状況を、何度も見かけて、大変うらやましかった。メンバーは日本円にして、およそ5000円から12000円ほどの年会費で施設を自由に使える事になっており、紙、インク(特別な色や、紙は自ら購入)などは自己申告制で利用し、材料費を支払っていた。
もともと、スウェーデン国内では共同ワークショップの数は多いようで、それぞれの町に様々な形態のワークショップ、アーティストランスペースが存在する。他のワークショップでは「時間貸し」や、利用時間を制限するところがお多いそうだが、オルガーデンはその中でも、施設の充実度と利用制度が特別だと、滞在中に出会った若いアーティストが教えてくれた。オルガーデンの施設内はいつも整理整頓されており、常に使いやすい状態。突然、遠方からアーティストが訪ねて来たり、メンバーの半分以上が鍵をもっており、二十四時間利用する事が可能。とてもじゃないが、スタッフ三人で管理できるとは思えず、観察しているとメンバーそれぞれが、その場所を整理整頓し、各自の制作の進行状況を見つつ、時に譲り合ったり、話し合いながら利用しており、利用者同士のストレスも少ない様子に大変驚いた。スタッフは、「元々、スウェーデンの歴史の中で『社会民主主義』の考えがあり、他人と協力して施設をシェアする事自体、一つの文化になっているんだ。しかし、現在スウェーデンもある種、アメリカ化し、それもかわりつつある。ストックホルムなどの大きな都市になれば、競争意識が強く、いまのオルガーデンのシステムも存在しづらいかもしれないな。」と、話していた。

小さい組織である故、レジデンスのアーティストの選出方法も独特で、アーティストとして海外で活躍しているメンバーたちがレジデンス等に出向いた際、そこで出会ったアーティストを誘い、メンバーミーティングで審議にかけ、個人的にコンタクトをとって招いている。もちろん、招聘の為の助成を受ける為に書類作成などにも協力的だが、基本は「アーティスト」と「アーティスト」同士。コミュニケーションはもちろん、各助成金なども作家自身が自ら働きかける事が必須である。その意味で、一見こじんまりとしたネットワークであるが、本人のキャラクターを初めから分かって招く、この方法が必然であるのだろう。私自身も、常勤スタッフの一人であり、ビヨーンのパートナーのキキ(Christina Lindeberg)が、岐阜県美濃加茂の「美濃和紙レジデンス」に滞在中に、偶然、出会ったのがきっかけ。それ以来の付き合いで、彼女のキャラクター、またオルガーデンの考え方や、その環境についてあらかじめ理解しており、制作を含め、今回の滞在制作についての全く不安なく、6週間という短い期間であったが制作に集中する事ができた。
ゲストルーム(宿泊のためのプライベートルーム)からみた窓の外の風景。水色のドアの建物はエッチングの為の工房。
 
工房の様子
プレス機や基本色のインクなどはメンバーが自由に使ってもいい事になっており、メンテナンスなどもスタッフ自身が行う。
 
 
 
 
 
ギャラリー
もともと、地元の作家の作品を展示していた美術館だったところ。施設内に貯水池などがあり野鳥観察の人たちや釣りをする人たちがふらりと立ち寄る様子も。
 
ビヨーン(
版画家/版画専門誌の編集長/オルガーデンの元ディレクター。一度体を壊してディレクターを退くが、それでも精力的に活動中
キキ(chrisina Lindeberg)
通称キキと呼ばれている。版画/インスタレーションなど幅広く作品を発表しているアーティスト。
日本のレジデンスに二度ほど参加経験あり。
   

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