
豊島美術館
豊島美術館は瀬戸内国際芸術祭の会期中の10月17日にオープンしたばかりの美術館です。
今回は10月16日に行われたプレオープンにお邪魔させてもらいました。
唐櫃港からバスで少し登ったところにある棚田の中に豊島美術館はあります。
外から見ると美術館は白く丸く、何だかやわらかそうな形をしています。

豊島美術館 写真:畠山直哉 |
天井には大きなまるい穴が二つ開いていて、中に入る前にその穴から細くヒラヒラとした何かが風に揺られているのが見えました。
入り口で靴を脱いでくださいと説明を受けたので、裸足になりいざ中に潜入。
白く、横に広いこの建物の中には、大きく開いた穴から見える空と、建物の白と、風と、床に散らばる無数の水滴がありました。
美術館と聞いていたのに、ここは美術館なのかと一瞬分らなくなり、じっとその場に存在する足下の水滴を見つめてみました。
床に弾かれた水滴は、丸い形を保ったまま傾斜をころころと転がります。
床には小さな穴が開いており、そこから少し水が湧き出ては、まるで生きているように跳ねながら床を移動していきます。
その行く先に同じように水滴があれば合わさり、少し大きくなりながら、行く先に何もなければそのまま、水滴たちは自由に傾斜を転がっていきます。
水滴たちがふっと湧き出て転がっているのを見ながら、その軌道を避けながら歩いていく自分が、まるで水とじゃれ合って遊んでいるようで、少し可笑しく思えました。
青い空が見える大きな穴の下に行くと、大きな水たまりがあり、水滴たちは床の傾斜に導かれ皆ここに集まっているようでした。

内藤礼《母型》写真:森川昇 |
大きな空にはよく見るとリボンがかかっており、それが時折入る風により軽やかに揺れていました。
先ほど入る前に見えた細くひらひらしたものが、このリボンだったようです。
大きく息を吸って吐くように、リボンは空に吸い込まれ、また建物の中にもどってきます。
プレオープンの会見で、この美術館について作者内藤礼・西沢立衛は「ランドスケープ」であると言いました。
その言葉を聞いた時、「ああそうなんだ」ととても納得しました。
この美術館で感じることのできるものは、どれも私たちが予期しているものではなく、豊島の空や風、その時のタイミングによって一瞬一瞬変わっていくものです。
美術館自体が豊島の一部であり、風景の一部なのです。
島をより体感できる「ランドスケープ」アートをぜひぜひ体感してみてください。
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