topreviews[瀬戸内国際芸術祭2010/瀬戸内海の7つの島+高松]
瀬戸内国際芸術祭2010

島とアートを巡る旅〜夕焼け編〜
TEXT 丹原志乃

今回で第4回目となる瀬戸内国際芸術祭レビュー。
最終回となる今回は、直島の「家プロジェクト」と先日オープンした豊島美術館についてご紹介いたします!

直島

1989年に安藤忠雄監修の直島国際キャンプ場が出来てから21年、ベネッセハウス、家プロジェクト、地中美術館、今年では李禹煥美術館開館と島全体がアートにあふれ、アートの島として国際的にも有名になった直島。
この瀬戸内国際芸術祭で一番来島者が多い島であり、会期終盤での混みようはすごかったです。
バスはぎゅうぎゅうでした。

古い空き家などを空間そのものを作品化する「家プロジェクト」は、1998年から展開されているアートプロジェクトです。
これらは常設展示であり、瀬戸内国際芸術祭の会期が過ぎても訪れることが出来ます。
現在7作品あるうちの2作品「石橋」と「碁会所」は今までの展示に新作が加わっています。
そんな「家プロジェクト」の中から今回訪れることのできた「石橋」と「碁会所」を含む4作品をご紹介します。


千住博《空の庭》写真:渡邉修

 


千住博《The Falls》写真:渡邉修


須田悦弘《椿》写真:渡邉修


まずは千住博の「石橋」。
明治時代に製塩業で栄えた石橋家。
その石橋家の家屋を修復し展示されています。
家の中のふすまには崖が描かれており、廊下を挟んで一方にはきれいな庭、一方には崖と開放感を感じることの出来る空間です。
そのふすま絵はまるで明治時代からそこに描かれていたかのように、屋内に自然に存在していました。

廊下を奥へ進むと、薄暗く広い倉があります。
その壁には壮大な滝の絵画作品が展示されていました。
《The Falls》です。
壁に展示された滝が反射するよう、床は黒く艶があります。
暗く静かで、本物の滝の前にいるように時間を忘れて瞑想できる空間です。

須田悦弘の「家プロジェクト」は「碁会所」です。
入り口から庭に入り、外から二部屋の和室を鑑賞するようになっています。
一室には畳の上に椿の花や葉が転々と、そして一本の竹が置かれていました。
椿たちは須田悦弘の木彫作品です。

本物そっくりに仕上げられた木彫作品の椿は、庭に植えられている本物の五色椿と対比するように置かれています。
私の訪れた時は庭の椿に花は咲いていませんでしたが、花が咲く2月〜3月頃に訪れるともっと対比を楽しめそうです。
もう一室には椿はなく、竹が一本置かれているだけです。
実はこちらの竹も須田悦弘の作品で、朴(ほお)の木から竹の形を彫ったものです。
椿のあった部屋の竹は本物(そのまま)の竹、そしてもう一室には木から彫られた竹の形をした竹。
こちらも対比するように展示されています。
庭と二部屋、この三点の対比が三角形を描くように、一つ一つに緊張感を生み出しています。
宮島達男の「家プロジェクト」は「角屋」。
暗い屋内で、玄関からすぐの部屋の中央は一段低くなっており、そこには水が張ってあります。


宮島達男《Sea of Time(時の海’98)》写真:上野則宏


杉本博司《Appropriate Proportion》写真:杉本博司


杉本博司《Appropriate Proportion》写真:杉本博司



水底には幾つものデジタルカウンターが設置されており、暗い空間の中でその数字だけが鮮明に光り、ただただカウントを繰り返しています。
カウントする速度はさまざまであり、ゆっくり数えていくものもあれば、とても早く回り繰り返すものもあります。
人が生きている時間の早さの感じ方のように、それぞれが各々の速度を保ちながら共存しているようでした。

鳥居の先の階段を上っていくと、「護王神社」での杉本博司の作品《Appropriate Proportion》に出会えます。
本殿や拝殿は、神社の改装にあわせ杉本自身が設計したものだそうです。
白い石が敷き詰められた敷地の奥には小さな木造の本殿があります。
そこからガラスでできた階段が見えます。

本殿をぐるっと回るようにして道を下ると、コンクリートの狭い入り口が見えました。
ガイドさんが渡してくれた懐中電灯を使用し進んでいきます。
その行く先は暗く、懐中電灯を使用し進んでいくようです。
何があるのかどきどきしながら中へ入っていき、狭い通路を少し歩くと行き止まりになりました。
横に目をやるとガラスの階段があり、階段が続く先からは光が漏れています。

どうやらこの狭い通路は本殿に繋がる地下のようです。
実際に階段は登れませんが、本殿に続くこの通路はまるで秘密の集会に向かう隠された道のようでした。
そんなことを考えながら来た通路を戻っていくと、遠くの入り口からは四角に切り取られた青い海が!
杉本博司の水平線をモチーフにしたシリーズ作品「海景」が、ここに再現されていました。

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瀬戸内国際芸術祭2010
2010年7月19日〜10月31日(会期中無休/一部施設休館あり)

瀬戸内海の7つの島+高松 直島/豊島/女木島/男木島/小豆島/大島/高松港周辺(香川) 犬島(岡山)
 
著者のプロフィールや、近況など。

丹原志乃(たんばらしの)

1985年岡山生まれ。地域とアートについて日々勉強しています
夏は島巡りでまっくろになりそうです。




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