topreviews[あいちトリエンナーレ2010「企画コンペ」/愛知]
あいちトリエンナーレ2010「企画コンペ」


あいちトリエンナーレ
コンペティション七変化

TEXT 藤田千彩

あいちトリエンナーレ2010では、「企画コンペ」は2種類ひらかれました。詳しくはこちら。
ひとつは、愛知芸術文化センター内にあるアートスペースG、H、Xでの展示。詳しくはこちら。
もうひとつは、長者町エリアを展示会場にしたもの。詳しくはこちら。
全体の会期とは異なり、この「企画コンペ」は3期に分けて作品は展示されました。
あいちトリエンナーレ2010第3弾となる本稿では、「企画コンペ」について考察します。

時期
8月21日〜9月12日
作家名
場所
ARTISANビル1 階内壁面


あいちトリエンナーレ事務局提供

ビルの壁面に描かれたのは、グラフィティではない。
モノクロで、模様のようだが、「おっ」と目を引いたのは、れっきとしたペインティング、壁画であるからだ。
大山がコンペで与えられた本来の場所は、ARTISANビル1 階内壁面だけだった。
しかし「のびのびと表現したい」と思った作家は、ビルの壁面に描くこともかなった。
おかげで、ペンキが少しはがれかかった壁は、とてもユニークなものになった。

時期
8月21日〜9月12日
作家名
場所
愛知芸術文化センター アートスペースG


あいちトリエンナーレ事務局提供

「皮膚と地図」というタイトルが魅力的だったのに、池崎拓也、窪田美樹、清水悟、林加奈子の4人の作品は、点在するシミのよう。
コンペがどのように審査されたのか知らないが、作品の大きさ(横幅も立て幅も)や位置がもう少しなんとかならなかったのだろうか。
例えば画像の窪田美樹作品は、モノの表面と内面という問題を果敢に取り組んでいた。
もっとも、個々の作品を味わう目的だったのかもしれない。

時期
8月21日〜9月12日
作家名
場所
愛知芸術文化センター アートスペースX


あいちトリエンナーレ事務局提供

墨のにおいを感じる平面作品と、筆の動きに圧倒されるアニメーション。
一瞬「福岡アジアトリエンナーレ」を思い出させるようなアジア度の高い作品が並ぶ。
でもいやじゃないのは、私自身もアジア人だからだろう。
なぜか安らぐ気持ちさえ感じて、結構長い時間眺めていた。

時期
9月15日〜10月3日
作家名
場所
伏見地下街店舗


タムラサトル提供

飛び散る火花のせいか、点滅するライトのせいか。
これほどまでに緊張感が走った空間はなかった。
私が行ったとある一日に500人の観客が見に来た、というのもうなずける。
それは危険な香りのなかに、きれいと思わせるものがあるからだろう。

時期
9月15日〜10月3日
作家名
場所
愛知芸術文化センター アートスペースG


あいちトリエンナーレ事務局提供

会場では壁を囲むように人々は座っていた。
アニメーションと言っても、テレビアニメーションでなければ不条理なストーリーがあるわけでもない。
CGでつくられた、優しいタッチの風景が流れて行く。
人工的な絵なのに、まるでドライブでの景色のように眺めてしまう、時間が過ぎて行く、なぜだろう。

時期
10月6日〜31日
作家名
場所
伏見地下街店舗


藤田千彩撮影

タムラサトルと同じ会場とは思えないほど、アットホームな展示会場。
もっとも伏見地下街の他店舗となじんでいた、いい意味で。
モノを見せるということではなく、つくるプロセスを見せるということらしい。
作家は普通に雑談をし、会場を訪れた観客は部屋の端々までなめるように見て行く。
「アート鑑賞」という針の振り幅は、かのように広いらしいことを知った。

時期
8月21日〜10月31日
作家名
場所
旧モリリン名古屋支店ビル、その他


藤田千彩撮影

建築系と思い、建築模型や展開図を期待して足を運ぶ。
しかしそこは、暗闇のなかに光線のようなものが走る場所。
光に手を当てようとしたが、156cmの私にはちょっと届かなかった。
そうなると不満を感じてしまい、惜しい作品だと思った。

時期
10月6日〜10月31日
作家名
場所
長者町繊維卸会館2 階南西部屋
雲の映像がただ流れているだけ。
外のほうが、空がきれいだし、別に室内で雲を見なくても、と冷たく思ったのはなぜだろう。
淺井裕介など、同じビル内で展示されていたものたちと似た感覚を受けてしまい、キュレーション力、作家の個性ということも考え込んでしまう。





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あいちトリエンナーレ2010「企画コンペ」
2010年8月21日〜10月31日(期間は展示によって異なる)

愛知芸術文化センター アートスペースXなど
 
著者のプロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年、岡山県生まれ、アート+文章書き。
仕事があれば、東京と関西の間にある便利な名古屋に住みたい、かも。
そんなことを思った、2010年夏でした。




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