top\reviews[PLANET STREET―2000年後に発掘された〈駅〜まち〜美術館〉/千葉]
PLANET STREET―2000年後に発掘された〈駅〜まち〜美術館〉
(左)スタンプラリーの模様(右)スタンプラリーのスタンプが押されたエコバッグ

人を呼び、コミュニケーションを呼ぶ仕掛け

 
(左)のぼり旗(右)ワークショップ「2000年後のお店を布にうつそう!」
 
 
のぼり旗が並ぶ栄町の町並み
 
 
プロジェクトルーム内の展示(未来年表)
 
 
(左)エコバッグへの拓本体験コーナー(右)アーティスト・トーク+ガイドツアーの模様
 
 
夕暮れにほのかに染まる栄町の町並み
   
また、今回の展示について語るとき、展示に人をひきつけるための様々な仕掛けについてもふれておかなければならないだろう。
まずその一例として、今回の展示にあわせて行われたスタンプラリーを挙げておきたい。
これは、作品が展示されている各店舗に鉛筆型の消しゴムを用いたスタンプを用意しておき、展覧会のチラシや今回の展覧会用につくられたエコバッグにスタンプを全部押すと美術館で景品がもらえる仕掛けだ。
スタンプはそれぞれの店ごとに色を変えており、スタンプを押したところがきれいな模様を描くようにデザインされている。特にエコバッグに色とりどりのスタンプが押された様は美しく、スタンプラリーに参加した人は何とかきれいな模様をつくろうと夢中ですべての店舗をまわるように仕掛けられているのだ。
スタンプラリーそのものは特に目新しいものではないが、このようにスタンプを押した後のことまで念入りに考えられたものはそうそうあるものではない。そうした仕掛けの緻密さに僕は思わずうならざるを得なかった。

また、通りを歩いていると、作品を展示している店舗の前に設置された紫色ののぼり旗が目に付く。
のぼり旗というと、イベントのPRなどを目的としてよく使われるが、今回ののぼり旗は、ただPRだけを目的につくられたわけではない。
よく見るとのぼり旗には、それぞれに違うモノの拓本が刷られている。これは、展覧会に先立って行われたワークショップで、地元の子どもたちがそれぞれの店舗の特徴を表したモノを拓本にとったものである。一つひとつのモノはよく見慣れたものだが、こうして拓本にとるとまるで別のもののように見えて興味をそそられる。拓本が何やら過ぎ去った過去の痕跡のようにも見えてくるのだ。
また、その拓本の下には、「問題:これは何の拓本でしょう? 答えはお店の人に聞いてね!」と表示されており、見る者にそれぞれの店舗の人とのコミュニケーションを促す仕掛けになっている。
商店街のようにそれぞれ専門分野に細分化された店舗が並ぶ中では、訪れる人は自分に関係のある店舗にしか立ち寄らないし、顔見知りでもない限りは用のない店舗に入るのには抵抗を感じるものだ。しかし、このようにコミュニケーションを促す仕掛けを施すことによって、普段は入らないような様々な店舗に入ることができ、なおかつ作品を媒介にすることによって容易にコミュニケーションを図ることもできる。これにより、ただ作品を展示して観るだけではなく商店街を活性化するはたらきも持つようになるのだ。
このように今回の展覧会は、人を呼びコミュニケーションを呼ぶ様々な仕掛けを施した結果、展覧会としての面白さはもとより、会場となった商店街の今後にもつながる効果をもたらしたという点においても大きな成果を残したといえるのではないだろうか。

このような展示が実現した背景には、美術館や柴川本人のはたらきはもちろんだが、今回の展覧会を美術館と共催している千葉アートネットワークプロジェクト(以下Wi-CAN)の果たした役割も大きい。
Wi-CANとは、千葉大学の普遍教育科目「文化をつくる」と教育学部芸術学研究室が中心となって2003年度に設立されたプロジェクトであり、千葉市内に自前のアートセンターを構える他、今回のようなアートを核としたコミュニケーションを図るような企画を行っている。
今回の展覧会では、今回の展覧会の一環として美術館内に設けられたプロジェクトルーム内の展示やワークショップの運営、作品の展示や撤収などを担ったが、スタンプラリーなども彼らと柴川、美術館の三者の話し合いの中で形作られたものだ。
彼ら自身にとっても、こうしてアートと街が結びつく生きた事例に関わったことは大きな糧になったと信じる。ぜひ今回の成果をまた別の機会に活かしてくれることを期待したい。






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