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山本一弥インタビュー
《デジャブ》H74×W112×D8cm / 2009年 / 撮影:柳場大  


山本
型をぬけばその形が一応出てくるのですが、僕が使っているものは表面が固まりません。僕らが透明樹脂と呼ぶ、流し込んで固めて透明にできる商品は、他にもたくさんあって一概にすべてそうとは限りません。でも僕が使っているものは同じ素材同士でくっついているところしか固まらない。石膏とくっついているところは固まらないのです。だから、石膏型から外した瞬間は、映画とかに出てくるエイリアンみたいに表面はドロドロ。その反応していない部分を全部薬品で落とすのですが、それでもやっぱり表面1ミリくらいは固まってない部分が残ってしまうので、無理やりヤスリなどで削ります。成形していく、みがいていく、つるつるの表面が表れる……もう一度作り直すという感覚でしょうか。かなり長い間磨いています。


立石
ひとつの作品でどれぐらいですか?

山本
やはり複雑な方が大変ですね。面積が多くてシンプルだと大きくヤスリを動かせるけど、複雑だと少ししか動かせないので削れるスピードも遅くなります。
ピンクの服をモチーフにした《デジャブ》という作品は、とくにディティールが細かいので1週間半ぐらい。朝から晩まで。


立石
1週間半!驚きです……。
過去の作品を見せてもらったのですが、過去の作品にはそれほど透明樹脂は使われていないですね。

 
撮影:柳場大
山本
そうですね。今までは木を使っていることが多かった。木といっても小さな角材だったり、ベニヤ板・合板のようなものを重ねたり。要するに小さい範囲のものを集めてかなり大きな作品をつくるということをしていました。透明樹脂の作品も小品で実験的には続けていて、それが今回こうして形になったという感じですね。


立石
じゃあ前から少しずつは作っていた、と。
先ほど過去の作品について「小さいものを重ねて、大きなものを作っていた」とおっしゃっていました。今回の透明樹脂も、何回も重ねて大きなものができていますよね。そういうところを意識していたりするのでしょうか?

山本
まあ偶然近いなと思ったのはあるんだけど、あんまりそこは重要というわけではないですね。
なぜ今までは木で作品を作っていたかというと、さっき言っていた軽くて薄いFRPなどに比べると、木は分厚く、肉厚に作らざるを得ないので、作品の中に肉になる部分がどうしても出てくる、その感じが単純に好きだったからで。
花柄を描いていたというのも実はそれとちょっと近いところがあります。あれは花柄を重ねながら描いていくんだけど、花柄を重ねることで奥行きが出る。奥行きが出るっていうのは、今回の透明樹脂の半透明な部分につながってくる、好きな感じですね。


立石
どちらにも微妙なグラデーションが感じられますね。
 
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