topeople[タン・カイ・シン、3年間の軌跡]
「島伝いに移動しながら 冬2005年編」
インスタレーション 2005年1月東京
素材:7つのスクリーン+45本の映像+資料+地図など
タン・カイ・シン、3年間の軌跡

島伝いに移動しながら



疑問形で始まる、疑問形で終わる。


疑問形で始まる、疑問形で終わる。

多くの「島」を訪ね、「島」について考えたカイさんは、一つの考えに到達した。
名詞的かつ地理学的な意味での「島」で何かをするというのではなく、アートを用いて「島」という概念を表現しよう、と。
カイさんの作品は、知らなかったり気づかなかった日本の多くのことを、気づかされることが多い。
私が2004年にUPLINK Galleryで見た作品は、マンタだらけの水槽に、ときどきマンガのコマ撮りが出てくる。
コマ撮りには擬音語や擬態語が用いられ、日本語の異様性を改めて知った。
同じく2004年にギャラリーサージで見た作品は、靖国神社を訪れる小泉首相といったニュース映像が用いられている。
他の国の人ほど、日本人は戦争のことや教科書問題など無関心であり(かくいう私もそのひとりだと思う)、改めてこういう提示をされると、はっと思うほどだった。

カイさんの作品はそういう映像だけでなく、先にも書いたが日本語のテキストが字幕のように大量に表示される。
その映像についてまわる音(音楽)あるいはアフレコの音(音楽)も大音量で耳をつんざく。
その濃い内容と濃い形態の作品を見たあと、いつもハッピー満足というよりも、「なんなのこれ?」と思うような、少し不満であり少し疑問を感じていた。
「世界にいる「相手・観客」に見せながら、お互いに我々のこの多義的な世界を一緒に見直していく。疑問形で始まる、疑問形で終わる。」というカイさんの意図に、私はまんまと引っかかっていたということを、最近になって知ったのだが。

今年カイさんは大学院生活を終え、6月上旬、母国のシンガポールへ帰っていった。
たった3年という間に、ものすごい風を吹かせていったタン・カイ・シン。
またいつか、どこかで、あなたに会えることを私は願っています。

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