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近森基++久納鏡子インタビュー

《at <case sandbox>》


エンジニアとの出会い


藤田
私はお二人と同世代なので、例えば「ICC(NTTコミュニケーション・センター)が出来た」みたいな、メディアアートの歴史みたいなものって実体験しているつもりです。
つまりメディアアートって、2009年現在、ここ10年くらいで確立したジャンルだと思うのですが、それでいいんですよね?

近森
そうですね、コンピュータや電子メディアを使ったアート分野を「メディアアート」という名前で呼ばれるようになったのはここ15年くらいのことだと思います。
アートという名前がついていますが、技術ありき、理工系と思われることも多いです。

久納
この分野では、一人で制作しているアーティストもいますが、グループで活動する人も多く、国もジャンルも超えて、いろいろな人たちとコラボレーションできるジャンルだと思います。

近森
僕たちは2000年頃から「minim++(ミニムプラプラ)」という名前で活動をはじめました。

久納
私たちもエンジニアなど違うジャンルの人とコラボレーションすることが多くて、クレジット(名前)の問題はいつも抱えていることでもあったので、グループ名をつけたんです。
そんなある日、東京大学工学部の学生だった筧康明さんと知り合いました。
彼は当時、コンピュータとカメラを使って人を認識し追跡するシステムの研究を大学でしていました。

近森
筧さん自身、僕たちと知り合って「やりたいことはメディアアートと呼ばれるものなのでは」と気づいたようで(笑)。
彼と知り合った半年後に開かれた2002年の水戸芸術館「カフェ・イン水戸」に出した、作品《at <case sand box>》に技術協力をしてもらいました。


藤田
これは人が歩くと動物の足跡になる作品なのですね。

久納
そうです。
そのあと筧さんは大学院に進学したのですが、「もっと面白いことをしたい」という私たちと、いわゆる「産学官協働」を目指す大学側の双方が目指すところが一致して、3人で2004年に会社「有限会社プラプラックス」をつくったのです。


藤田
ほぉぉぉ、「必然として会社はつくるもの」と聞いたことがありますが、本当にそうなんですね。

近森
名前をデザイン化したとき、私たちminim++の2人と筧(かけい)さん、だから「++×」という表記にしたんですよ(笑)。


藤田
しゃれてますねぇ!
3人で他にも作品はつくられているのですか?

近森
そうですね、一緒に研究してつくったのが《hanahana》。
これは「においを目に見えるようにしたい」というアーティストのアイデアと、「匂いのセンシング技術と匂いによる空間認識の研究」という研究者のアイデアを、作品という形で結びつけたんです。
香水をつけた葉っぱの形の紙を花瓶に近づけると、花瓶の影の先ににおいの花の映像が映し出される、という作品です。
 

《hanahana》

 
 
久納
濃くなったり薄くなったり、においが実際に変化していくのをリアルタイムでセンシング(計測)して、映し出された花の形や色も変化していきます。
用意した香水だけでなく、持ってきた香水とか口臭でも反応するんですよ(笑)。
においってまだ研究途中の分野なので、結局センサー自体からつくらなくてはいけなくて。


藤田
特許は取ってないんですか?

近森
取っていません。
作品という形にすることで、特許を取ることと同じ「公にする」ということになるかな、と僕たちは考えているんですよ。

 
 
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