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増本泰斗インタビュー

増本泰斗インタビュー
Yasuto Masumoto Interview

いま「学びの場」が増えている、と私は思う。
大学、カルチャーセンター、お稽古教室、趣味サークルなど。
そんなとき、学生や若い作家の中からよく耳にするのが、
「増本さんみたいな場をつくりたい」ということばである。
増本泰斗はアーティスト、彼のアニメーションやドローイングはユニーク、と思っていたのだが、私の認識とは違っているらしい。
彼らの話を聞いていると「増本さんはいろんな人と関わり、思考する場をつくる人」らしい。
久しぶりに京都で会って、いま増本が何をしているのか、何を考えているのか、その活動を聞いてみた。

Interviewer 藤田千彩

《Protection》パフォーマンスのようす/動画はこちら

「展覧会」だけが
作品発表の場ではない


藤田
ご無沙汰しています、元気でしたか?
東京から京都に移られてから、会ってないですよね。

増本
ありがとうございます、元気です。
京都での生活も、もうすぐ3年めです。


藤田
その3年間、東京だけでなく、名古屋や大阪で増本さんの活躍を聞くのですが、私がこれまで見てきたいわゆる「作品を展示する」という増本泰斗ではないのです。
多くの作家が展覧会という場で作品を発表する、つまり展覧会 is 作品だと気がしますが、増本さんにとっては違うのでしょうか。

増本
ちょっと違いますね。
僕は2007〜8年、ポルトガルに行っていましたが、行く前と後では制作スタンスに変化がありました。
ウェブサイトでは、ポルトガルから帰国した後に行なってきた活動の記録を数多く公開していますが、いわゆる「展覧会」はその中のいくつかしかないんです。

藤田
えっ!?

増本
「展覧会」という形式で「発表できること」と「発表できないこと」があるんです。


藤田
えっ!!

増本
もう少し正確に言えば、僕にとって展覧会はいくつかある選択肢のひとつであって、すべてではないということです。
けれども展覧会以外での実践が「プロジェクト」なのか「ワークショップ」なのか、「イベント」なのか、ちょっと定義しずらいのです。


藤田
どういうことですか、ちょっと詳しく聞かせてください。

気づく→制作するを繰り返す
トライ&エラーの日々


増本
大学生のころは写真学科だったのですが、グラフィティをやったりしていました。
アートを見ることも好きで、鑑賞後に友達と作品について議論することはとても有意義だったのですが、「アーティストになりたい」と強く意識していたわけではなくて、なんとなくな感じでした。
大学の卒業制作でつくった作品で、東京のart & river bankで個展を開催できたことで、アーティストという自覚が生まれたのですが、同時に、世の中のアーティスト像とのディレンマがありました。
そんな時に、たまたまポルトガルへ行くことになりました。
帰ってきたら「アートとは関係ないことをしよう」と思っていたんです。
でも実際ポルトガルで生活していると、僕自身の生活の仕方、言葉の問題、外国人であるがゆえの隔たり、そして偏見などによって、これまで以上に「社会」を意識させられたのか、徐々に「社会と意識的に関わってアートをやりたいな」と思い始めるようになりました。
それはアートで社会を表現したいのではなく、アートの形式を利用して社会にアプローチする、というようなことです。


藤田
具体的にどういうことをしたのでしょうか。

増本
ポルトガルに居るときは、言葉の問題でポルトガル社会にしっかり接続できない自分自身の日々のジレンマをドローイングで記録する、絵日記のような作品をつくっていました。
絵日記を通して、社会に対する思いや考えを示そうとしたのです。
帰国してからは、ポルトガルで外国人として生活したことがきっかけとなり、今度は日本に住んでいる人たちの外国に対するイメージをリサーチし始めました。
そうしているうちに、ポルトガルにいたときのシェアメイトからポルトガル語の料理レシピを借りて料理をつくったことを思い出したんです。
読めない、理解できない外国語のレシピで料理をつくる、それが非常に楽しかったから、またやろう、ということで、という映像作品《The World》を撮りはじめたんです。


《The World》の一シーン:調理風景

藤田
ああ、増本さんのお母さんが韓国料理とかつくる、とかですよね。

増本
そうです。
全部で15、6人くらいかな、僕らは異文化や他者をどこまで理解できるか、あるいはどのように理解しているのか、などを考える良い機会となりました。

藤田
私は英語とハングルのバージョンを見たことがありますが、他にもバリエーションはあるのでしょう?

増本
出来る限りいろんな言語にトライしました。
撮影を続けていくと、料理に挑む人たちの言動が豊穣であることに気づきました。
全く予想していなかった言動だったり、まさにステレオタイプな言動だったりと、いろいろと考えさせられる状況に遭遇しました。
ただ「他者理解」ということにおいては、ある解答を得られたというよりも、「僕らは異文化について、そのぐらいの隔たりを持ってでしか接することができていない」ということを身にしみて体験できたというか、頭で考えるよりももっとリアルに経験できたような気がしています。


レシピ


藤田
その気づきは、どう続いていったのでしょうか。
 
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増本泰斗(ますもと・やすと)

略歴
1981   広島県生まれ
004-6年   東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了
2000-4年   東京工芸大学芸術学部写真学科卒業

個展
2012   「クリテリオム82」水戸芸術館現代美術ギャラリー(水戸)
2011   「Blue, Red, White and Yellow」観察社/Observation Society(中国、広州)
2010   「Restoration of Behavior」La Chambre Blanche(カナダ、ケベック)
「Private Chorus」Alternative Space Loop(韓国、ソウル)
Video Scream」モンネ・ポルト(長崎)
「Runaway Laboratory」radlab(京都)
2009   「The World」ZAIM gallery(横浜)
「Delicate Tongue」gallery Archipelago(東京)
「The World」KABEGIWA(東京)
2008   「Bird Watching」Vera Cortês Art Agency(ポルトガル、リスボン)
2005   「ALL NOTES ON」art & river bank(東京)
2004   「ALL NOTES OFF」art & river bank(東京)


グループ展
2012   「Redzone parking "Adventures of practice 〜実践の冒険"」小金井アートスポットシャトー2F(東京)
2011   「Inbox already read」仮設空間アーキペラゴ(松戸)
「Kotobuki Creative Action」寿町 南雲アパート304号室(横浜)
2010   「No Soul For Sale (Collective Parasolとして参加)」Turbine Hole, Tate Modern(ロンドン)
「Hana Buzz」野毛HanaHana(横浜)
2009   「Viarco Express」Museu da Presidência da República(ポルトガル、リスボン)
「Bright World」A.I.T Room(東京)
「CAMERA INFINITA」Tent Gallery(エジンバラ)
2008   「absolute distance – Meiro Koizumi x Yasuto Masumoto」CAMP/Otto Mainzheim Gallery(東京)
2007   「Everything but the word?…」Instituto Camões(ポルトガル、リスボン)
「Caldas Late Night」Museu Bernardo(ポルトガル、カルダス・ダ・レイニャ)
2006   「Looking is Believing」日ノ本ビル(東京)
2005   「12 DIVERS AT THE MOUNTAIN GATE」山口履物店(東京)
2004   「do fim ao fim」art & river bank(東京)

ワークショップ
2012   「Grêmio Recreativo Escola de Política #42:徘徊(仮)」Antenna Media(京都)
「戦争についての運動会」東京工芸大学(東京)
「リトマス苔テスト」東京藝術大学(東京)
「モラル・パニック」32camp(水戸)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #41:代行」Antenna Media(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #40:予定表」Antenna Media(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #39:アートスクールのざわめき」Antenna Media(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #38:寸劇、労働者」(京都)
「The Academy of Alter Globalization+森田浩彰 #12:Re: フルーツバスケット」東京造形大学(神奈川)
「The Academy of Alter Globalization+森田浩彰 #11:Re:(展覧会を見に行かない?)」六本木(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #37:見えない成り行き」Antenna Media(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #36:筆柄と筆先」Antenna Media(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #35:卒業制作についてのフルーツバスケット」(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #34:テーブルの脚」Antenna Media(京都)
「The Academy of Alter Globalization+CAMP #10:テーブルについてのフルーツバスケット」blanclass(横浜)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #33:Protection」gsgp女子美術大学アートセンター準備室(神奈川)
「The Academy of Alter Globalization+CAMP #09:Fruit Basket Turnover about ambivalence, Koganei Art Spot Chateau 2F, Tokyo
「Grêmio Recreativo Escola de Política #32:Participation in the discussion about an option of not doing, gallery SUKABORO, Kyoto
「Grêmio Recreativo Escola de Política #31:Participation in the birthday party, Kyoto kaikan, Kyoto
「Grêmio Recreativo Escola de Política #30:ケアとサポートについて」茨城大学(水戸)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #29:遺伝と慣習」(京都)
2011   「The Academy of Alter Globalization+CAMP #08:暴力についてのフルーツバスケット」多摩川(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #28:忍者」瓜生山(京都)
「A blast sound」(滋賀)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #27:意思を介在しない線を描く」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #26:犯人捜し」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「Hold your breath and run」(千葉)
「The Academy of Alter Globalization #07:ジェンダーについてのフルーツバスケット」(千葉)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #25:ナイーブなことについてのフルーツバスケット」東京工芸大学(東京)
「Something that hits him」東京工芸大学(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #24:戦争写真の見方のちがい」京都造形芸術大学構内(京都)
「Breakout」東京工芸大学(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #23:外灯」出町柳(京都)
「The Academy of Alter Globalization #05:新しい国旗」(茨城)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #22:ラスタファリズム」(静岡)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #21:戦争写真の見方のちがい」mind gallery MITTE(静岡)
「The Academy of Alter Globalization #04:戦争についてのインタビューとマッサージ」えんぱーく(長野)
「The Academy of Alter Globalization #03:塔」 cafe Quiet Afternoon(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #20:戦争写真の見方のちがい」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #19:人間力の鍛錬」瓜生山(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #18:卵を投げる/投げつけられる」京都造形大学構内(京都)
「Protection」Observation Society(中国、広州)「Grêmio Recreativo Escola de Política #17:放射能を感じる」Observation Society(中国、広州)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #16:ミサイル防衛」Observation Society(中国、広州)
「Blue, Red, White and Yellow」Observation Society(中国、広州)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #15:固定概念を壊す」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「The Academy of Alter Globalization #02:替え歌」 cafe Quiet Afternoon(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #14:インターネット情報の真偽」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #13:リゾート地の家」(静岡)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #12:誰かを傷つけるかもしれないもの」京都芸術デザイン専門学校(京都)
「The Academy of Alter Globalization #01:ヌードデッサン」 cafe Quiet Afternoon(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #11:グライドスロープ設備のテスト」大文字山(京都)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #10:目隠し山登り」(大阪)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #09:目隠し鬼ごっこ」(大阪)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #08:目隠し山登り」(大阪)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #07:開発エリアのテント」辻堂(神奈川)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #06:Body Montage」寿町(横浜)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #05:ドリブルの練習」神保町(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #04:怒りをぶつける演習」小金井アートスポットシャトー2F(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #03:壊れた公共物」(東京)
「Grêmio Recreativo Escola de Política #02:地下室」小金井アートスポットシャトー2F(東京)
2010   「Grêmio Recreativo Escola de Política #01:爆発の衝撃」小金井アートスポットシャトー2F(東京)
「Outsiders' Memoir」La Chambre Blanche(カナダ,ケベック)
「Protection」La Chambre Blanche(カナダ,ケベック)
「Attractions」La Chambre Blanche(カナダ,ケベック)
2008   「みんなで1つのアニメーションを作ること」YNKB(デンマーク、コペンハーゲン)
「みんなで1つのアニメーションを作ること」寿町(横浜)

スクリーニング
2012   「GENESIS #01」Jikka(東京)
「MIACA screening Traces of Rational Violence 合法的な暴力の痕跡 (The VIP program of HK Art Fair)」Double Happiness(香港)
「Better Life for Artists」HIGURE 17-15 CAS(東京)
2011   アートフォーラム中国語版WEB
2010   「第56回 オーバーハウゼン国際短編映像祭 [MIACAプログラム]」(ドイツ、オーバハウゼン)
「香林坊ビデオアートミーティング」NTT香林坊ビル(金沢)
2009   「Löwe Screening」UFO Galerie und Kunstraum(ドイツ、ハレ)
「Ping-Pong Critic」京都アートセンター(京都)
2008   「VideoRelay」muzz program space(京都)
2007   「screaming video screening 2」art & river bank(東京)
2006   「@nimation」COLUMBIA /名古屋造形美術大学(愛知)
2005   「screaming video screening」gallery archipelago(東京)

パフォーマンス
2010   「Private Chorus」La Chambre Blanche(カナダ,ケベック)
「HAMIGAKIKKO + Yasuto Masumoto」(京都)
「Private Chorus」モンネ・ポルト(長崎)
「Private Chorus」Alternative Space Loop(韓国、ソウル)
「Cosmic Dolly Shot」(ロンドン)
「Urban Ensemble」radlab(京都)
「HAMIGAKIKKO + Yasuto Masumoto」radlab(京都)
「Rikiya Yamakawa + Yasuto Masumoto」radlab(京都)
「Tokumasa Matsubuchi + Yasuto Masumoto」radlab(京都)
2009   「Small Talk, Big Talk」カルチュラル・タイフーン(東京)
「Beginners」松原会館(別府)
「Time to cook delicious dish」寿町生活会館(横浜)


パブリック・トーク
2012   「Picnic #27:杉田敦×増本泰斗ほか」(京都)
「Picnic #26:『反復すること、反芻すること』高橋耕平×増本泰斗」(京都)
「Picnic #25:『今考えているアイデアについて』良知暁×増本泰斗」CAMP Shiojiri Conversations #2(塩尻)
「Picnic #24:『戦争を思考するためのアートの実践について』澤崎健一×増本泰斗」(京都)
「Picnic #23:『いつ芸術的効果は生じるかについて』澤崎健一×増本泰斗」(京都)
「Picnic #22:杉田敦ほか」(カッセル,ドイツ)
「Picnic #21:増本家」(京都)
「Picnic #20:杉田敦×沼下桂子ほか」(神奈川)
「Picnic #19:増本家ほか」(京都)
「Picnic #18:杉田敦×増本家」(水戸)
「Picnic #17:杉田敦×増本家」(京都)
「Picnic #16:杉田敦×増本家×沼下桂子ほか」(京都)
「Picnic Diskussion Projekte 2012」(京都)
「Picnic #15:杉田敦×増本家×沼下桂子ほか」(京都))
2011   「CAMP:現在のアート<2011>」アサヒアートスクエア(東京)
「Picnic #14:『アートにおける労働のダークサイド』杉田敦×増本泰斗×京都造形芸術大学ASP学科学生」(京都)
「Picnic #13:杉田敦×増本家」(京都)
「Picnic #12:『アートスペースについて語り合う』杉田敦×増本泰斗×京都造形芸術大学ASP学科学生」(京都)
「Picnic #11:杉田敦×増本家」(京都)
「Picnic #10:京都芸術デザイン専門学校情報デザインコース学生×増本泰斗」(大阪)
「Picnic #09:杉田敦×増本家ほか」(京都)
「Picnic #08:『アートと政治性』杉田敦×増本家×CAMPほか」(京都)
「Picnic #07:『アートと政治性』杉田敦×増本家×CAMPほか」(京都)
「Picnic #02:杉田敦×増本家」(京都)
「Picnic #01:杉田敦×増本家」(京都)
「CAMP:30時間トークマラソン『生きるとは? アートとは?』」エンパーク(長野)
「CAMP:アートと政治性」3331アーツ千代田(東京)
2010   「CAMP:12時間CAMP『コミュニティ』」アサヒアートスクエア(東京)
「《 A.I.R Miyashita Park 》アートとソーシャルの結合と分断」Collective Parasol(京都)
2009   「奥村雄樹×増本泰斗」玉川大学(東京)
「CAMP:冨井大裕×増本泰斗」Otto Mainzheim Gallery(東京)
2008   「Random Art vol.4」女子美ガレリアニケ(東京)
「Random Art vol.3」art&river bank(東京)
「Random Art vol.2」山口履物店(東京)
「CAMP:Random Art vol.1 岡田真由美×杉田敦×増本泰斗」Otto Mainzheim Gallery(東京)
2006   「Altenative Rooms」art&river bank(東京)


増本泰斗さん 
 



 

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