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柴川敏之インタビュー

柴川敏之さん

2000年後の冒険ミュージアム/広島県立歴史博物館
ワークショップ「2000年後を紙にうつそう!!! 」2000年後の発掘現場のコーナーで拓本をとっている子どもたちの様子。

2000年後の冒険ミュージアム/広島県立歴史博物館 ガラスケースのコーナー
 柴川作品のウルトラマン人形の化石と草戸千軒町遺跡の仏像を混在させたガラスケースでの展示2000年後にはウルトラマン人形も仏像と勘違いされているかも?

「発掘された作品」を作ったきっかけ



草戸千軒と展覧会



広島での活躍とこれから


  2000年後の冒険ミュージアム/広島県立歴史博物館
のぞき穴のコーナー中には柴川作品

美術館やギャラリーなどで作品を見たとき、「どういう人が作ってるのだろう?」と思うことは誰でもあるはずです。このコーナーでは、作家(アーティスト)に直接お話を伺いながら、作品の背景や作家さんの心の中などを聞いてみます。

INTERVIEWER 藤田千彩

第一回目のゲストは、柴川敏之さん。
1966年1月11日(彫刻家ジャコメッティの命日)に大阪府生まれの柴川さんは、広島大学時代に相撲部を設立したという変わった経歴をお持ちのアーティストです。現在、広島県福山市在住。地元の短大で教職に就きながら、作品を作っておられます。



[「発掘された作品」を作ったきっかけ

藤田
こんにちは。柴川さんは「いまの社会が2000年後に発掘されたら?」という壮大なテーマで、作品づくりをなさっています。たとえば、ウルトラマンやキューピー人形が発掘されたら・・・こんな形になっているであろう像、とか。あるいは、携帯電話やテレビのリモコンなど身近な物体も・・・こういう形になっているであろうということを、遺跡のように埋まっているインスタレーションとして展示されていたり、発掘されたものとしてショーケースで展示する、という形も取られています。


柴川
この発想にいたったきっかけは、私の住む広島県福山市にある草戸千軒町遺跡との出会いでした。福山市に転居したばかりの頃(1993年)、芦田川に浮かぶたくさんの中州を眺めながら自転車を走らせていると、ひとつの中州で工事をしていました。聞いてみると発掘調査のようで、約300年前に大洪水で川に沈んでしまったという伝説の集落が存在していたことがわかりました。この時、まさにここは「日本のポンペイ」だと感じ、はじめて草戸千軒町遺跡の存在を知ったわけです。

藤田
遺跡というと、古墳とかとても古いものばかり想像してしまいますが、草戸千軒町遺跡のような歴史をたどったものもあるのですね。


柴川
そうですね。そこで早速、草戸千軒町遺跡を紹介しているという広島県立歴史博物館にでかけてみました。タイムトンネルのような薄暗い通路を入っていくと、そこには時代劇で見たような中世の世界がひろがっていました。出土品の中には、日用品の皿や下駄をはじめ、鍬や糸巻き、井戸などがあり、そのどれもが朽ちたり欠けたりすることによって、原形とは異なる自然な形を生み出しており、造形的に美しく不思議な形をしていることに驚きました。キャプションを見てもそれが何だったのかわからないものもあり、むしろそのわからなかったものの方が今でも心の中に焼きついています。当時、油彩で古い建築物をモチーフに制作していた私にとって、この草戸千軒町遺跡との出会いが大きな転機となり、身近な物やゴミたちがとても新鮮に見えてくるようになりました。

藤田
そのあと、柴川さんはイタリアでも生活をなさって(1997年文部省在外研究員として)、実際ポンペイもご覧になっているんですよね。ポンペイや草戸千軒町遺跡という、「なくなってしまった町」というものに興味を持つようになられたのですね。

柴川
当時の人々の生活に思いをめぐらせているうちに、現代社会との共通点が浮彫りにされてきました。もしかすると、現在使用している物もポンペイや草戸千軒と同じようにいつかは発掘され、博物館に展示されてしまう日がくるのではないか?もし、そうだとすれば何が原因で消滅してしまうのだろうか?現代はポンペイや草戸千軒などを消滅させた自然災害だけでなく、戦争や核問題などの人為的な災害もあるわけで、むしろ昔以上に危険な状況の中で我々は生活しているのではないかと考えるようになりました。ちょうどその頃、世の中は西暦2000年を目前でした。1966年生まれの私にとって、西暦2000年の到来は小学生の頃からの楽しみで、宇宙ステーションに人々が住んでいたり、車が空を飛んでいたりとマンガに出てくる夢のような世界を想像していました。しかし、実際に西暦2000年が近づくにつれ、その期待は裏切られ、まだ遠い先の世界であることがわかりました。

藤田
2000年問題・・・そういえば特に何事もなかったですね(笑)。SF小説のような世界でもないですね。


柴川
よく考えてみると、私たちの身のまわりにある品々は、ほんの100年前には存在しなかった物も多く、2000年後の遠い未来の視点から見れば、まさに現代を示すものばかりです。21世紀はおおよそ想像のつく世界でした。けれども、2000年後ともなるとなかなか想像もつきません。果たしてこの地球が存在するのか。もし存在したとして、人類はどうなっているのだろう・・・。2000年後の41世紀に、我々の現代社会が、"化石"として発掘されたとしたら、一体どうなっているのだろうか?このような体験や思いが重なり合い、2000年後の未来の視点から現代社会を考える制作活動が始まりました。

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柴川敏之

1966   アルベルト・ジャコメッティの命日 (1966.1.11) に大阪府で生まれる
1991   広島大学大学院修了
1997   文部省在外研究員としてイタリアに滞在
2002   文部科学省科学研究費若手研究(B)にてベルリン、ロンドン等を調査

主な個展
1995   レスポワール展/銀座スルガ台画廊(東京)
1999   美術の時間 41世紀からのメッセージ/DAVID HALL(岡山)
2001   今日の作家シリーズ PLANET CIRCLE/大阪府立現代美術センター(大阪)
2003   2000年後の冒険ミュージアム“川に埋もれた伝説の町〜草戸千軒”と“現代の美術”展/広島県立歴史博物館(広島)
2004   “PLANET MUSEUM / 0NE ROOM”/夢創館(神戸)
アート・ネットワーク“PLANET MUSEUM OF ART / 0NE ROOM”ふくやま美術館(広島)
2005   “PLANET MUSEUM OF ART / TWO ROOMS”/奈義町現代美術館(岡山、8〜10月を予定)、他

主なグループ展
2000   龍の国・尾道 〜その象徴と造形/尾道市立美術館(広島)
2002   ヒロシマアートドキュメント2002/旧日本銀行広島支店(広島)
2005   VOCA展「現代美術の展望 新しい平面の作家たち」/上野の森美術館(東京)、他

ワークショップ
2001   「2000年後を紙にうつそう!! 」大阪府立現代美術センター(大阪)
2003   「現代を版画にしよう! ― 棟方志功に挑戦」ひろしま美術館(広島) 
「2000年後を紙にうつそう!!! 」広島県立歴史博物館(広島)
「現代を版画にしよう! ― ミロに挑戦」成羽町美術館(岡山)
2004   「現代の化石をつくる(多様な素材で)」ふくやま美術館(広島)
2005   「2000年後の風景を作ろう!!」丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川、5月14〜15日を予定)、他

 

 

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