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深井聡一郎インタビュー


《country house》  陶 サイズ可変 2010  新宿眼科画廊


「記憶」というテーマについて


立石
先ほどからよく「記憶」という言葉がでてくるような気がするのですが、「記憶」というものは大事なキーワードなのでしょうか。

深井
記憶っていうのは曖昧になったり、時間とともに風化してしまったりするものだと思っています。それは完全に個人的なものなんですけど、ある瞬間で他者の記憶とリンクできたりすると面白いかなって思ってやっています。
例えば、僕があるヨーロッパの山のモチーフで作品をつくったとしますよね。それを見た人は「あ、うちの近所の山でしょ」みたいなことを言うかもしれない。それでいいと思うんですよ。その人の何か心にある記憶みたいなものと、僕の心にある記憶みたいなものっていうのは、全く関係ないものかもしれないけど、そこで何かがリンクして思うところができる。それはそれでいいんじゃないかなと思ってやっています。
ずっと「記憶の○○」というような作品しか昔から作ってないので、一貫してテーマみたいなのは変わってないかなと思います。


立石
なぜ「記憶」というテーマなのでしょう。

深井
「何だかよくわからないもの」自分の中から消えない記憶っていうものっていうのは、いったい何なんだろうというところから始めました。あとさっきも言ったように、時間の経過とか時間による風化のような、「薄れていく感」を表現に入れたかったので記憶というモチーフやテーマは便利だったということがあるかもしれません。


立石
そのテーマや、作品が、今後変化していくような展望はありますか。また、今後つくってみたい作品のアイデアなどもお聞かせいただけるとうれしいです。

深井
今後の展望……どうでしょうね。これからも広義の「記憶」といった部分は変わらないでしょうね。「記憶」という大筋は変わらず、テーマの提案方法や見せ方などのアプローチの仕方は変わるかもしれませんが。
そういうふうに、ブレない部分を持ち続けることが大事であると思っています。
つくってみたい作品ですが、もう自分では手に負えないくらい大きい作品をつくってみたいですね。それにはいろんな人の手が必要になってくると思うんですが、ものすごく大きな作品を陶でつくりたい。
一軒の建物の1面を、僕の作品にしてしまうっていうのも面白そうですよね。今回の《country house》みたいなのが1分の1スケールで本物の家の1面にするという。


《country house》  陶 サイズ可変 2010  新宿眼科画廊

立石
それは面白そう!
実際、自分の身長を3倍も4倍も超えてしまうような陶に出会ったことがないですから。

深井
賛助してくれる方募集中です。笑


立石
ではいつかマイホームの夢が叶った暁に……。笑
今回はお忙しいところインタビューを受けてくださりありがとうございました。
一つの素材を極める真摯な姿勢が感じられました。今後も深井さんの出会う風景、感じた風景から持ち帰る世界を楽しみにしています。

 
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