多層化された表面の、
甘い誘惑
TEXT 高嶋慈
芳木麻里絵は、モノの「質感」や「手触り」に非常に敏感な作家なのだと思う。
個展案内のDMを手に会場のSAI GALLERYへと向かいながら、改めてそう感じた。
裏面に簡潔に記された文字情報は一見シンプルだが、真っ白のボール紙に箔押しという凝った仕様なのだから。文字の上をそっとなぞると指の腹にくぼみが感じられ、斜めから見ると文字は銀に光る。
繊細なレースや刺繍、一口サイズのチョコレート、それを包んでいた銀紙、青い釉薬による絵付けの美しい、伊万里焼の皿…。芳木の作品は、美しい装飾品やおいしそうなチョコレートといった感覚に訴えかけるモチーフを、一見リアルに再現しているのが特徴だ。
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《レース #17》(部分)2010年、240×590mm、ガラス板にシルクスクリーン
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