topreviews[第一回・北九州国際ビエンナーレ /福岡]
第一回・北九州国際ビエンナーレ


  旧JR九州本社ビル
銃をとれ
TEXT 友利香

第一回北九州国際ビエンナーレは、展示作品、コンサート、映画・シンポジウムなどから構成された展覧会である。
ここでは、旧JR九州本社ビル展示会場を紹介したい。

一口で言うと、無愛想な展覧会である。
キャプションも解説チラシもない。
会場案内図は、不親切でわかりにくい。
お客は映像の音声だけを頼りに歩くことになる。
展示作品である会場内部は、ポスターや急須・・・という用品も、閉鎖当時のままで置かれている。
それは、古さや場所性を臭わせる装飾のためではない。
作家は裸のまま作品を見せろ!お客も本気で見ろ!といった緊迫した様相であった。


『ステイトメント 0029:茲に忠良なる爾臣民に告ぐ』他
(ヨンヘ・チャン・ヘヴィー・インダストリーズ+*キャンディ・ファクトリー)
入口正面には昭和天皇の終戦の詔勅などの映像が、ゴシック文字と音声で展開されている。
通りがかりの人は驚いて覗き込む。 文字はこんなにも、強いものなのか。

通りがかりの老人が、立ち寄り話す。
「旧JRビルは、1937年 アメリカ合理主義を手本に建築されたビルで、当時、このあたりでは一番高いビルだった。
戦後、焼け残ったのはこのビルだけで、 天皇陛下はこのビルの階上から周辺の視察をされた。」
今や周辺地区は補修・復元された「門司港レトロ」というテーマパーク。
この展覧会の意義を生々しく感じた。

『 ダーティ・タタミ・ルーム』
(ヨンヘ・チャン・ヘヴィー・インダストリーズ+*キャンディ・ファクトリー)

『島根限定 竹島ものがたり』というお菓子です。
とても美味しそうなのですが、「竹島」の焼印と日の丸を見ると怖くて食べれられません。
『ランペドゥーサ島に辿り着くには』
(フェデリコ・バロネッロ + 古郷卓司 / 伊・日)

ヨーロッパとアフリカの境界に位置するリゾート地、ランベドゥーサ島を紹介した観光ビデオ。
しかし、この島は近年ボートピープルが後を絶つことない。
美しい自然と美しいメロディの中、 溺死した難民のための墓地も写されている。

「難民認定なら我が社にお任せあれ!」とは書いてなかったが、難民への宣伝ビデオのようだ。


『スキーム』
(ショーン・スナイダー / 米(ベルリン在住))
アメリカ、イラン、イスラエル・・といった世界各国の、CM・クイズ番組・天気予報・・空爆の生中継といった多種のテレビ映像をつなぎあわせ、 架空の24時間を作り出している。
映像の 合間に流れる「(TELEVISION) ALWAYS SPEAKS THE TRUTH(テレビは常に真実を伝える)」と 「NOT THE WHOLE TRUTH(だがすべての真実ではない)」というメッセージが、鑑賞者を不安にさせる。


『国道189号-エンゼル ジャパン』
『沖縄軍用基地、売ります!買います!』
(*キャンディ・ファクトリー・プロジェクト(from コラボラティブ・リサーチ with ショーン・スナイダー))
どうしようもなく根深い基地問題を、古郷卓司とショーン・スナイダーは、アメリカンタッチの映像と音楽とで露見する。

『永遠の悪臭の沼地』
(ジョン・ミラー / 米)
鏡の迷路の奥に鎮座するイミテーションのフルーツ。全ての臭いが混ざり合うと悪臭になる。
どの位置に立ってもフルーツは見えているのだが、どれが本物なのかわからず、なかなかたどり着けない。
人は甘さにありつくため、迷路を必死で突き進む。
たとえ、それがイミテーションであっても。幻影であっても。毒であっても。腐敗していても。

「仕事を終えて、ここの玄関を出たら、SPが銃を構えて見張っていてね・・・」と、
終戦後ここで働いていた老人が話す。
今、射程に入れるべき対象は 、これから続く本展覧会の動向である。
すでに、次に向けてのネットワーク強化・拡張は始まっているに違いない。

写真:鶴留一彦

第一回・北九州国際ビエンナーレ

門司港旧JR九州本社ビル
2007年9/28〜10/31
 
著者のプロフィールや、近況など。

友利香(ともとしかおり)

下関市立美術館『宮沢賢治展』でアルバイト中です。
関門海峡に臨む美術館は、市職員による設計だそうです。
オシャレですよ〜。
下関市立美術館




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