topreviews[大谷有花×川田祐子 2人展 〜おしゃべりな色 思いだす色〜/神奈川]
大谷有花×川田祐子 2人展 〜おしゃべりな色 思いだす色〜

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1.大谷有花
 展示風景
2.川田祐子
 展示風景
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3.大谷有花《トラ・オリ・キミドリの部屋》/大谷有花《トラ・オリ・キミドリの部屋》 2000年 キャンバスに油彩、紙粘土、針金
4.川田祐子《the green waves 緑の波》2007年 キャンバスにアクリルガッシュ/スクラッチ、ハッチング


振り幅の広い絵画世界へ
TEXT 藤田千彩

会場風景
 
神奈川県相模原(さがみはら)市。
東京の都心部から電車で3〜40分ほどの、いわばベッドタウンである。
女子美術大学、隣の市には多摩美術大学や東京造形大学など、美術大学があり、美術作家も数多く住んでいる街でもある

相模原市民ギャラリーは、JR相模原駅の駅ビルにあった。
名前のとおり、広く市民に開かれたギャラリーである。
今回の展覧会「大谷有花×川田祐子 2人展〜おしゃべりな色 思いだす色〜」は、「市内に在住・在勤している若手作家などを取り上げる夏の企画展」ということであるが、DMには大谷有花の名があった。

大谷は相模原出身である。
今回は地元を意識して、かなり初期の作品から現在に至るまで、30点近い作品を見せていた。

私の知る大谷作品は、この夏に第一生命の壁に置いてあった《キミドリの部屋》のように、蛍光ピンクや蛍光グリーンの地が目にしみ、「ウサギネズミ」と呼ぶキャラク
ターが画面に登場するものだ。
大谷作品を知る人の多くは、作品についてきっと同じような感想を抱いているだろう。
そして、人は問いかけるだろう、「女の子っぽいよね」「そのキャラクターはなんだい?」と。

私が大谷作品に何か感じるとするならば、ムラカミやナラと言った人たちのキャラクターの使い方と違うということ。
大谷はおそらくウサギネズミを自分の気持ちの代弁者として描いているだけで、キャラクターという意識はない。
大谷が抱えている悩みや問題意識を具象化したウサギネズミは一人歩きをし、カラフルな画面の森の中で立ち止まる。
人との距離のとり方、一人で描くことの孤独感、かわいくなりたいと願う女の気持ち。
きっとこういう感情でウサギネズミは描かれている・・・と思っていた。

オリに入ったトラ(参考)
 
大学時代に描いたという《トラ・オリ・キミドリの部屋》の作品を、今回初めて見た(はず)。
「これは?」と大谷に問うたところ、「ウサギネズミの原形であるトラ。キミドリの部屋に行きたくても行けない、トラの入っている檻は出ようとしたら出れる隙間があ
るのに出れない。大学時代の私の気持ちを形にしたらこうなった」という答えだった。
私の頭の中でパチン、と音がした。
やはり「キャラクター」として描いているのではなかった。
というか、こうして考えると大谷の作品は誤解(誤読?誤見?)されてしまう惜しさがあると強く感じた。

川田祐子は相模原市在勤者である。
東京を中心に発表を続け、2002年にVOCA展へ出品するなど、かなりの実力派作家である。

私は、川田の作品を、おそらく初めて見た。
写真で見ると青や緑を基調にした絵画、という印象しかなく、楽しそうに見える大谷に比べておとなしそうな川田、という感じに受け取れていた。
しかし実際は違った。
写真には写しだされない、スクラッチやハッチングと呼ばれる線や斜線が、画面の表面に小さく刻まれている。
しかもその画面サイズはかなり大きく、どの作品も壁を覆うくらいのものだった。
女性の細やかさと執念を見たし、私はその手作業の細かさに圧巻されてしまった。

同じ空間に並べられると、意味などを探ってしまうものだが、ここまでまったく違う方向性のものを見せられると一緒くたに考えられない。
女性が、世代が、時代が、ということで論じるのではなく、もっと自由に、作品と向き合うことができる・・・そんな展覧会だと思った。

大谷有花×川田祐子 2人展
〜おしゃべりな色 思いだす色〜


相模原市民ギャラリー(神奈川県相模原市)
2007年7月21日〜8月26日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がけていた。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」などでアートに関する文章を執筆中。
chisaichan@hotmail.com




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