topreviews[パプリカ 新田 玲子 木場 仁美 中島 弘恵 」/愛知]
パプリカ 新田 玲子 木場 仁美 中島 弘恵

 
中島弘恵「テイスティング オブ ドリーム」
   

彼女たちのパプリカ

TEXT 野田利也

「パプリカ」は新田玲子、木場仁美、中島弘恵の女性アーティスト3人によるグループショーである。
香辛料であるパプリカは、その鮮やか赤色に反して辛みはなく、料理の「彩り」として用いられる。その可愛らしい語感も手伝って、どことなく現代社会の少女像を象徴しているように思われる。
作品を見てみよう。
天井には真珠のネックレスのように連なったあめ玉が吊され、床にはそれが落下したかのようにあめ玉が散らばっている。新田による作品である。
木場は、両手に収まる程度の大きさのオブジェを無数に天井から吊し、会場の視界を占拠した。そのひとつひとつは、赤や紫に染められた羊毛の小さな玉から成り、中には鈴やビー玉、スーパーボールなども組み込まれている。
どちらの作品もカラフルでポップな印象がある一方で、時間の経過によりドロドロとあめ玉が溶けていく様や、どことなく臓器を思わせる柔らかなオブジェはグロテスクでもある。
そして、壁面に展示されたビキニ姿の若い女性のポートレートが中島の作品だ。どれも顔は写っておらず、興味は自然とそのビキニへと注がれる。それもまたカラフルであるが、新田、木場の作品とは全く異なる素材感である。それが何であろうかと確かめようと凝視すると、それが指の先ほどの大きさのクマ型のグミが集まったものだということが分かった。
私は頭の中に「ロリポップ」という言葉を思い浮かべていた。言わずと知れた「棒付きキャンディー」である。グミやあめ玉の味覚、甘味の比喩としては十分であろう。そのカラフルな色彩、丸い形状からもそれが思い出されるのは不思議ではない。しかし、私が思い浮かべたそれは、「ロリポップ、ロリポップ、ロ〜リ、ロリポップ」というメロディーに乗ったものだ。アメリカの女性4人によるポップスグループ、ザ・コーデッツが1958年に発表した「ロリポップ」という楽曲である。それに登場する(少)女は、自分はアップルパイやキャンディよりも甘いと歌っている。もちろん、彼女の言う甘さとは味覚的なことではない。
ここに展示された彼女たちの作品は、少女が持つ独特なエロスを放ち、渾然一体となって鑑賞者を無邪気に挑発する。
もし鑑賞者が男性であるならば、ナバコフの小説「ロリータ」の主人公、ハンバートのような人生の破綻を危惧してしまうかもしれない。
彼女たちのパプリカは、「彩り」に留まることなく、見た目も味も刺激的に違いない。
新田玲子「すきなだけ」
 
木場仁美「生まれてきたミッピー」

 



パプリカ
新田 玲子 木場 仁美 中島 弘恵

air's box(愛知県小牧市)
2007年4月27日〜5月13日
 
著者のプロフィールや、近況など。

野田利也(のだとしや)

1972年生まれ。名古屋芸術大学美術学部デザイン科卒業。




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