光と影と、反射と透過と
ガラス越しに見える世界
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藤田千彩
メガネのレンズのような、透明な円形のガラス。
そのガラスに木や鳥が描かれている。
ガラスには、直接、照明があたっている。
光はガラスを透過し、影となって、描かれた木や鳥が壁に映る。
木漏れ陽によって、影ができているときに似ている。
大きいガラス、小さいガラス、とサイズがいくつもあり、
きらり、と光を反射しているように見えるものもある。
冬には感じなかった、光の力を思い出す。
長かった冬のせいで、忘れていた春を思い出させる。
早川陽子の作品は、ガラスだけでなく実際は、ガラス越しの壁にも、鳥や木々の影がなぞらえて描いていた。
もし、このガラスを外したら。
それでも壁には景色が描かれ、私は早川が表現したい世界を、歩いている気持ちになるだろう。
改めて、私はガラス越しに世界を眺める。
窓から眺めた景色、というのとも違うけど、鳥のさえずり、木々のゆらぎを感じる。
帰りの多摩川沿いの道なりで、私は春の光を初めて感じた。
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