topreviews[風呂屋劇場/香川]
風呂屋劇場


 
A
B
C
D
E
 
F
G
 
H
I
 
J
K
 
L
M
 
A.****/B.渡邊ゆみ「”Mt.Fuji” for landscape」/C.池崎拓也「脱衣場/Wipe a memory place」/D.アルカディリ・モニラ「Forbidden Love〜女」/E.アルカディリ・モニラ「Forbidden Love〜男」/F.狩野哲郎「Weeds」/G.浅井裕介「Making Plant」/H.山本篤「U.F.B.」/I.山本篤「Shibuya Naoshima Crossing」/J.柴田祐輔「ハレーション」/K.沙都紀「人魚」/L.黒田良子「うぃー・うぃー・うぃー。」/M.浦崎麻里子「無題」
いい湯だな♪
TEXT 藤田千彩

公衆浴場、それは身体の汚れを落とし、疲れを取る場所。
男湯と女湯という性別での区別により仕切られている。
直島にある「才ノ神浴場」は、三菱マテリアルという会社の社員用浴場であった。
この使われなくなった「才ノ神浴場」を舞台に、’80年代生まれのアーティスト10人による展覧会が行われた。

入口は男湯の玄関からで、渡邊ゆみ「”Mt.Fuji” for landscape」が飾られている。風呂にはやはり富士山、ということか。
男湯の脱衣場には、池崎拓也「脱衣場/Wipe a memory place」。思い出の品々をインスタレーションしたというが、いまいちピンと来ない。
当たり前だが、服を着たまま浴室へ。小さな風呂イスに座って鑑賞できるのは、アルカディリ・モニラ「Forbidden Love〜女」。胸の大きな女性がゆらゆらぼんやり映される映像は、男の妄想か。
風呂場の片隅に伸びる雑草は、狩野哲郎「Weeds」。種から植えたという雑草は、狭い範囲で生存競争を繰り返す。外に出れば島にも生えている雑草だが、狩野の作品はささやかにひっそり伸び、生きているということを実感させられる。
浴槽には、浅井裕介「Making Plant」が葉や芽を伸ばしている。マスキングテープで形を作り、黒いマジックで枝、葉といった植物を描いている。深い湯船の中に入ると、小さな黒いジャングルに迷い込んだような不思議な気持ちになった。
男湯の奥はボイラー室。山本篤「U.F.B.」、「Shibuya Naoshima Crossing」の2作品が並ぶ。「U.F.B.」は支柱の周りをぐるぐるとカブトムシが回っているようなインスタレーション。ボイラー室のボイラーとあいまって重機のような強さと、夜明けに迷い込んで昆虫採集に出ているような勇ましさを感じる。「Shibuya Naoshima Crossing」は渋谷の交差点と直島の祭りの映像が交互に流れ、その音声は逆に流れている。渋谷の交差点の音は直島の祭りでのにぎわいで、なぜかとてもマッチしていた。
ボイラー室のさらに奥、控え室のようなところには柴田祐輔「ハレーション」。ドアを開けるとまぶしいくらいの蛍光灯の光、目が慣れない先には住宅街にある家の写真。なぜここに家が、と考えさせられるまもなく、家の不自然さにも気づく。実はこれは実写ではなくCGという。見えるものを当たり前に受け入れることが、まぶしい光やCGで作られた写真によって裏切られた気持ちになった。
次は女湯へ。
先にあったアルカディリ・モニラの作品だが、ここでは「Forbidden Love〜男」。つまり理想の男性がモチーフになった映像作品が流れている。しかし筋肉隆々の男で、それはどうなの?私の理想ではないわ、と思った。もしかしたら先の胸の大きい女性も、男性すべての理想ではないのかもしれない。理想の異性、というだけでも、人によって外見の理想の違いがあることを深く考えさせられる。
浴室内には沙都紀の「人魚」という映像作品。ゆらゆら水中で動く女性、まばたきする目、動く手足。浴室の壁面をスクリーンにし、浴室内を動き回っているようだ。
そして女湯の壁には渡邊ゆみ「”Mt.Fuji” for landscape」。男湯の入口にあったものとは異なりかなり大きい写真だが、やっぱりお風呂には富士山なんだなあと思う。
女湯を出て脱衣場には、黒田良子「うぃー・うぃー・うぃー。」。壁一面を使った平面絵画は、女の情熱や気性を激しく表しているようだった。
女湯の入口は浦崎麻里子「無題」という映像作品。作家が最近気になると言う工場、映し出されていたのは靴工場だったが、靴を作る工程の一部と壁に草をメンディングテープで張りつけるようすを交差している。靴は出来あがっていき、張りつけた草はひとつの平面作品のようになっていく。くつとくさ。つながりがイマイチわからなかった。

直島ではちょうど「STANDARD展2」が開催されていた。
私個人の意見だが、この10人の作品は「STANDARD展2」より面白かった。
風呂場という場所でしていることにとても合っていたし、見せる・見ることにも集中できてよかったと思う。
新しい世代の作家たち、がんばれ。


風呂屋劇場

香川県・直島 才ノ神浴場
2006年11月3日〜12月10日(土・日のみOPEN)
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/




topnewsreviewscolumnspeoplespecialarchivewhat's PEELERwritersnewslettermail

Copyright (C) PEELER. All Rights Reserved.