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藤村豪写真展「being in right places」

being in right places(2006年制作)
 
being in right places(2006年制作)

遠くなつかしい思い出は、いつもぼんやり見えている気がして
TEXT 藤田千彩

 
being in right places(2006年制作)
 
 
being in right places(2006年制作)
多摩川沿いのアパートのような建物にあるギャラリー。
ベランダのような通路を、通ってもいいのだろうか。
そんなためらいと恥じらいを、いつも私は感じる。
それは、現実と異空間であるギャラリーを結ぶ道のよう。
一歩ギャラリーへ足を踏み入れたら、そこはもう現実ではない。

網戸のはっきりした格子が気になる。
青と緑の中間色で、方眼紙のような網戸。
写真に、こういった邪魔者があってもいいのだろうか、と思う。

藤村豪が写す写真は、網戸越しに景色が撮影されている。
網戸越しに撮影された写真は、網戸に焦点があてられているため、網戸の向こうの景色はぼんやりとうつろだ。

時間とともに、その邪魔者は、演出家に変わっていく。
夏の夕方とか、暑さとか、蚊のぷーんという音とか、セミの鳴き声とか、そういった「なつかしい」という思いをほうふつとさせる。
本来藤村しか見ていない景色のはずなのに、視覚だけでない感覚をも呼び起こす。

ふと思い出し笑いをしそうになった。
それは楽しい思い出だったのか、なつかしくて笑ってしまったのか。
私以外にその笑みの理由は教えられない。


藤村豪写真展「being in right places」

art&river bank(東京都)
2006年4月15日〜4月29日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/




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