
「思い」をはこぶ。
TEXT 籔中いずみ
夜空をヒラリヒラリと青白い輝きが舞い落ちる。
種を遠くに飛ばすカエデの種子の形をもとに設計された紙のオブジェに、 青と白のLEDを取り付け上空40メートルの気球から落下させる。
高橋匡太ライトアート「夢のたね」プロジェクトが福井県あわら市芦原小学校・湯の町グラウンドで行われた。当日、落下させた種は1万個。そのひとつひとつには1万人の夢や希望を託した、まさに「夢のたね」なのである。
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数多くの小・中・高等学校でワークショップを行い、 1万個の夢のたねが集まった。 |
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実現を支えたのは、たくさんのプロジェクトサポーターたち。 |
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あたりが闇に包まれた午後6時30分。
朝から降り続いていた雨があがり、快晴、無風という奇跡的なコンディションで上演は始まった。
「気球、ゴー!」
高橋匡太のかけ声をうけ、まるで干物のよう地面にぺったりとはりついていた気球に
ドクンと命がふきこまれる。ものの数分で大きくふくらんだ気球が悠然と目の前に立ち上がり、 ふわりと地面を離れた瞬間、会場はどよめきに包まれた。
10メートル、20メートル・・・。
これから目の前にひろがるであろう幻想のパノラマへの期待感に息をつめる観客たちの上空に、ハラリと輝きが放たれる。次々に舞い落ちる「夢のたね」たち。
1万人の夢が輝きの滝となって舞い落ちる様は、 圧倒的な美しさですべての人を魅了していた。
人は「思い」をはこぶ器(うつわ)なのかもしれない。
夢、希望、願い、さまざまな「思い」がその人をその人たらしめる源である。
勢いよく回転しながら遠くに飛ぶもの、直線を描きながら静かに落下してゆくもの。
悲しくも美しい命の縮図。しかしそのどれもが地上にたどり着いてからも静かな輝きをたたえている。
地上に降り積もった「夢のたね」はスタッフたちによって集められ観客ひとりひとりに配られた。手から手へ「夢のたね」がはこばれていく。
「思い」は誰かに受け継がれ、そこに自分の「思い」をたくし、それをまた誰かが受け取る。砂粒のように小さなカケラになったとしても、その連鎖と積み重ねが私たちの世界を形作っている。
今、手の中にあるのは私の心に蒔かれた誰かの「思い」。
私の「思い」はいったいどんな人の心に届いたのだろう?
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著者プロフィールや、近況など。
籔中いずみ(やぶなかいずみ)
1977年大阪府生まれ。
1999年成安造形大学造形学部卒業。
京都のデザイン会社でライター修行中です。 |
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