ギャラリーで鳥になって見た
TEXT 藤田千彩
地図。
町や国の形や、学校などの場所を知りたいときに使う。
辞書を引くと「地球表面の一部または全部の状態を、一定の割合で縮め、文字・記号を用いて平面上に表したもの。」と出ている。
いま、私はギャラリーアートフェチの白い空間に張られた地図を眺めている。
ギャラリーのある名古屋を中心に、東京あたりから神戸あたりまでの広範囲の地図が、壁や机に張られている。
その張られた地図は、濃い緑と薄い緑が、ペンで「塗られて」いる。
意図的に塗られたその緑は、モコモコペンと呼ばれる、塗るとインクが盛り上がるペンのため、小さな森を作っているようだ。
山や公園がある場所を選んで、塗っているわけではないらしい。
むしろ、そこに「緑があったらいいな」という気持ちで塗られているようだ。
私は鳥になった気持ちで、空から町を眺める。
地図そのものに印刷された、長野などの山の「緑」と違い、ペンで盛られた「緑」は目にしみる。
空中浮遊しながら考える。
「もし、こんなに木々が町にあったら」
そして私という鳥は、町へ降り立ち、大きな並木道を見上げるところを想像する。
「きっと地球は、こんなに木が多かったはずなのに」
鳥になった私は、東京から名古屋を飛んだ。
海に沿って。山を越えて。
名古屋を過ぎて、琵琶湖を目指す。
「日本も意外に広いのね」
ちょっとした旅行気分にも浸ることが出来る。
そして、いつまでも私という鳥は、張られた地図の上を飛び、ギャラリーを浮遊していた。
ときどき、盛られた「緑」を止まり木にしながら。
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