名前は、「ひみつギャラリー」。
TEXT 藤田千彩

知らせというのは、いつも突然やってくる。
「ひみつギャラリー」という名前の差出人のメールもそうだった。
ひみつ、という文字に魅かれて私は行きたい旨の返事を送った。

アーティストのクロダマサユキが運営する「ひみつギャラリー」、内容はひみつではない。
場所がひみつ、らしい。
都内某所、ということだけは他人に伝えてもよいらしい。

クロダからの返事には、こう書いてあった。
「ワークショップに参加しますか？」
もちろん答えはイエスだ。
某駅で降り立ってから、私は「ひみつギャラリー」の「カギ」を探す「ワークショップ」を始めた。
知らない町の細い路地、右へ左へ、上を見て看板を確かめ、下を見て道路標示を確かめる。
オリエンテーリングに似たワークショップののち、カギは手に入れた。
まるでドラクエのようだと思った。

「ひみつギャラリー」は、ひとつの部屋とトイレが展示会場となっている。
部屋には３人の作品が置かれている。
岡本育子の作品は、穴の開いた灰皿など、キッチュな作品をいくつか並べている。

設楽玲子作品［+zoom］

設楽玲子の作品は、彼女の思いがぎゅうぎゅうに詰まったかのような白い枕（クッション）のようなものが壁に配置されている。
黒野祐一郎の作品は、心臓をモチーフにした造形作品。心臓の仕組みの図もあり、ちょっとドッキリする。
トイレには、同時期、東京芸術大学学生会館展示室で行われた「ちょっといっぱいいっぱいです」展に参加した作家の作品が詰められていた。

ちょっといっぱいいっぱいです展

「ちょっといっぱいいっぱいです」展は、井戸敏之、竹本真紀、田島孝通、冨安由真、そしてクロダマサユキが出品している。
井戸敏之のインスタレーションが中心にあり、井戸はかきあつめた物、思い出の品などを並べている。
アンデパンダン展はこういうものだったのだろうか？と、ふと思った。
クロダマサユキの「ダルマ」と名づけられた、銀色に塗られた卵は、床に直接並べられて、いくつか割れていた。はかない。
竹本真紀のペインティングは、石膏像をモチーフにした新作で、面白いと思った。
田島孝通のパラパラマンガを分解したようなドローイングは、開いた手が開ききっていくというものがアニメーションのように羅列されている。
冨安由真の作品は、柔らかな布や紙で作られた本に、絵や詩がこまやかに描かれている。

トイレでの展示［+zoom］

ひみつギャラリーのトイレは彼らの作品のサイズが小さくなり、量が少なくなり、展示されていた。
なんだか、出してるメンバーの「いっぱいいっぱい」さがすごく伝わってきて、このタイトルはハマってる・・・。

出されたお茶にお金を払うことで、少しだけギャラリー運営を手助けする気持ちになる。
こうしたアーティスト主導のスペースは、名古屋で見たことがあったけど、ちょっと応援したくなる。

ひみつギャラリーにご興味ある方はメール himitu-g@jcom.home.ne.jp をしてみよう。