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もう一つの万博 -ネーションステートの彼方へ-Platform in Kitakyushu
傷口は夢へと昇華され
TEXT 友利香

「もう一つの万博」は、北九州市立美術館と3つのギャラリー(北九州市立旧百三十銀行ギャラリー・成長型アートスペース level1・ギャラリー SOAP)を会場として、国際的にも有名なニューヨークの非営利ギャラリー 「White Box」と共同で開催された。北九州では、サラエボ出身でボスニア紛争を体験したセイラ・カメリッチと、ベオグラード出身のミリツァ・シモノビッチの作品が展示されている。
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1) 北九州市立旧百三十銀行ギャラリー(両作家の旧作平面作品の展示)
 入り口右壁面にはセイラの平面:ぎっしり約200枚の《ボスニアン・ガール》。「歯がない?ヒゲ面?ウンコくさい?それってボスニアン・ガールだ!」。あるオランダ人兵士の落書きを作品にしたもの。これが、パブリック・アート・プロジェクトとして、ポスター・新聞・雑誌・ポストカードの形で出回ったというから、偏見への反駁も強烈である。しかし、このセイラの「険ある毅然さ」は、実に挑発的であるが、自己の分析・構築の表現だと受け取れる。
セイラの映像「untitled/Daydreaming」は、赤いドレスに包まれた美しい彼女と政治家の演説。政治家と庶民というポジションの違いを訴える。「Imagine」では、「想像してごらん。ゴミを漁っている人がいることを」というメッセージが。しかし画面には(寝そべっている彼女にも、邪魔者は消せ!のように苺のへたをむしり取り続ける指先にも)生活感がない。この美しさを持って、政治や貧困を語るのが、彼女の戦略なのであろう。私たちが、いかに現実を掴もうとしていないか、いかに煙に巻かれた社会で呑気に暮らしていることか、と気付く。
 ミリツァの《チャンピオンズ・リーグ》はサッカー選手の写真シールを使い、選手の目、口、髪といった顔のパーツを、他の選手のパーツと入れ替えた作品で、120枚展示されている。チームや人種・民族の壁を越えたコラージュに、なぜか滑稽だとは笑えなかった。

上より
セイラ・カメリッチ
a.《ボスニアン・ガール》
b.《untitled/Daydreaming》
c.《Imagine》
ミリツァ・シモノビッチ
d.《チャンピオンズ・リーグ》
 
2) ギャラリー SOAP(セイラ・カメリッチの映像作品による新作展示)
彼女は、祇園がサラエボのトルコ人街の木造建築と似ているということに注目したらしいが、京都で制作された作品は、自身の過去作品を持っている、舞妓姿のセイラの映像だった。

3) 成長型アートスペース level1 
ミリツァ・シモノビッチの 滞在制作による新作発表の予定であったが、彼女が体調を崩し帰国したため、東京芸術大学、京都精華大学で行われたシンポジウム(プラットホームと呼ぶ)のビデオ映像が流れている。

4) 北九州市立美術館(シンポジウム)
パネラーは、この展覧会のキュレーター・若手のアーティストを擁して国民国家を超える展覧会を企画し注目を浴びている渡辺真也と、作家のセイラ・カメリッチ。セイラには、自らの手で「生い立ち」というドアを叩き壊していく女性の自信を感じる。どうやら私は、展覧会をジェンダーの視点で捉えてしまったようだ。濃厚なミリツァ・シモノビッチの作品にもっと触れられれば、違った印象であったに違いない。

上より、
e.《Sejla-san/セイラ 夢 / Sejla Dream (ポストカード)》
f.《Sejla-san/セイラ 夢/Sejila Dream》
g.《home sick》
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g
 
もう一つの万博
-ネーションステートの彼方へ-Platform in Kitakyushu


北九州市内4会場にて
2005年6月18日(土) 〜7月1 日(金)

著者プロフィールや、近況など。

友利香(ともとしかおり)

10月から開催される第21回現代日本彫刻展。
会場下見で、作家さんも多数来宇!
設置は8月中旬頃かな〜。待っててくださいね〜。
出品作家20名は↓こちらでチェック!
http://www.city.ube.yamaguchi.jp/choukoku/exhibition/list.htm

「彫刻の街」山口県宇部市在住。子供を通じて児童心理と絵画との関係に興味を持つ。
真の開眼は若林奮。好きな作家は柳原義達から会田誠と幅広い。
現在、アートを広めようとボランティア活動中。
宇部の彫刻


 

 

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