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美術散歩


(注) 「これがアメリカの現代アートだ」(佐々木健二郎著 里文出版 2002年7月10日初版第1刷)

現代美術理解への近道か

TEXT 菅原義之

 誰でも買って読まなかった本ってあるのではないか。恥ずかしい話だが、
 「これがアメリカの現代アートだ」 佐々木健二郎著 里文出版
 この本は買って読まなかったものの1冊であった。あるとき本棚を見ていたらこの本にぶつかった。そうだこれ読んでない。中をパラパラとめくった。まずスタートはデュシャン、少しあとにマン・レイである。何で読まなかったんだろう。
 少し前の話になるが、時あたかも横浜でやっているデュシャン展に友人と行くことになっていた。いい本見つけた。すぐに読んだ。読んでいくうちにはっきり言ってのめりこんでしまった。230ページほどのやや大きめの新書版だったが、すぐに読み終えた。何かすっきりしたような、頭が整理されたような気持ちだった。
 なぜか、私の苦手にしていた70年代から90年代にかけての傾向の概略が具体的に分かったからであった。
 一般の美術書だと90年代までをほかの時代と同程度に書くものはほとんどない。肝心のところで終わってしまうのが常である。この本は、著者の言葉を借りれば「1999年で締めくくる」とのことであった。

 私は、“美術の流れ”をベースに作品を見ると理解がより深まると考えている。もちろん知らなくとも、分からなくとも問題ないが、分かればより理解が深まるのではないか。私よりもっと説得力ある文章を見たのでここに紹介しよう。
 「もしできれば、美術の流れが予備知識として頭に入っていれば、わかりにくいと思っている現代美術も、作家がなぜその表現をしたのかがわかる。例えば70年代に制作された現代美術を今わかろうとするためには、70年代がどんな時代だったか知っておけばいい。・・・」

 戦後、美術の中心はパリからニューヨークに移り、現在でもここを中心に回っているといえるであろう。それだけに戦後のアメリカ美術の流れを理解することは広く世界の美術動向を見るのに欠かせないのではないか。
 川が山間部から急に扇状地に出たように、戦後になって美術はその範囲を急速に広げていった。したがって、美術をこれまでのように“絵画”と“彫刻”だと考えると、とてもついていけないであろう。


今日の芸術」(岡本太郎著 光文社文庫 1999年11月10日初版第6刷)
 この本は1954年に刊行されベストセラーになったもので、当時多くの作家に影響を及ぼしたそうである。

 岡本太郎は「今日の芸術」(光文社文庫)の中で次のように記している。
 「すぐれた芸術には、飛躍的な創造があります。時代の常識にさからって、まったく独自のものを、そこに生み出しているわけです。そういうものは、かならず見るひとに一種の緊張を強要します。
 なぜかと言いますと、見るひとは自分のもちあわせの教養、つまり絵にたいする既成の知識だけでは、どうしてもそれを理解し判断することができないからです。・・・」
 また、こうも言っている。
 「すぐれた芸術家は、はげしい意志と決意をもって、既成の常識を否定し、時代を新しく創造していきます。・・・そういう作品を鑑賞するばあいは、こちらも作者と同じように、とどまっていないで駆け出さなければなりません。だが、芸術家のほうは、すでにずっとさきに行ってしまっているわけです。追っかけていかなければならない。・・・その距離をうずめていかなければならないのです。」

 戦後まもなくアメリカに出現した抽象表現主義、その後ネオダダ、ポップ・アート、ミニマル・アート、さらに概念芸術(コンセプチュアル・アート)、80年代になり新表現主義などの流れがつぎつぎと現れた。同時に写真、ヴィデオなどの映像作品群、インスタレーション、パフォーマンスなどをみるに至り、その範囲は際限なく広がるかのようである。
 本書は、この複雑な流れの中で、上記“美術の流れ”にそれぞれ対応する代表的作家を30人紹介している。1999年までを対象にしていて、ごく最近までの状況が理解できる。終章として「20世紀から21世紀へアートはどこへ行くのか」で締めくくっている。
 構成は、個々の作家について、それぞれ7ページほど紙面を割き、おおむね美術の流れ、各作家の作風や作品、必要に応じて同様の考え方を持つ作家例示などに及んでいく。それぞれ代表的な作品の写真つきでもある。
 私には本書読了後、いくつもの発見があった。岡本太郎の言う“ずっとさきに行ってしまっている芸術家に追いつく”ために、“その距離をうずめようとする人”のために、本書は絶好の図書であろう。

著者プロフィールや、近況など。

菅原義之

1934年生まれ、中央大学法学部卒業。生命保険会社勤務、退職直前の2000年4月から埼玉県立近代美術館にてボランティア活動としてサポーター(常設展示室作品ガイド)を行う。

・アートに入った理由
 1976年自宅新築後、友人からお前の家にはリトグラフが似合うといわれて購入。これが契機で美術作品を多く見るようになる。その後現代美術にも関心を持つようになった。

・好きな作家5人ほど
 作品が好きというより、私にとって興味のある作家。クールベ、マネ、セザンヌ、ピカソ、デュシャン、ポロック、ウォーホルなど。




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