アートと地方自治体との
関係性
TEXT 藤田千彩
去る3月28日に、私は府中市美術館でイベント「談話室ふちゅう」でトークをした。
その準備やトークで話をしていて、気付いたことがある。
「レビュー=展覧会について」であったということだ。
つまり、ワークショップやイベントなどの展覧会以外についての意見や見解、記録はあまり残されていないのではないか、と気付いた。
いまや現代美術において、表現方法だけでなく、見せる場の多様さも特徴として挙げられよう。
しかし多くのレビューは、現代美術のごく一面しか伝えていないのではないか。
もちろんこのPEELERでさえも。
そう気付いた2日後、3月31日の朝、私は川越に向かっていた。
アートの遺伝子を受け継いだ
川越商人の心意気の結晶
「伊佐沼工房」のオープン
という案内をいただいたからだ。
よく分からないものに行くのは好きなので、わくわくしていた。
JR川越駅の1つ手前、南古谷駅で下車。
そこからタクシーで15分ほど、外部からは「不便」なところに伊佐沼公園はあった。
しかし行ったら行ったで、木こりのおじさんが住んでいそうな小屋のような工房があった。(画像=1)
しかも工房の前、地面にいくつも作品が置いてあった。(画像=2、3)
数人の話を聞いていると、この小屋はただの小屋でないことが分かって来た。
川越市長や川越市議会議長といったそうそうたるメンバーのあいさつによれば、これから文化に力を入れていくため、4月から川越市は「文化・スポーツ課」という部署をつくったらしい。
この小屋は、近くにある協同組合川越バンテアンという青年会議所のようなものの創立40周年記念と、川越商工会議所創立110周年記念で建てたらしい。
しかも正式名称は「彫刻体験実習棟」というらしい。
確かに施設の中は、クレーンも入り、天井も高い。(画像=4)
壁にはそういったことが書かれたテキストも貼ってあった。(画像=5)
施設はこういった工房があり、並んでギャラリースペースもあった。(画像=6)
中ではオープンを記念した「彫刻家からの贈り物展」が開かれていた。(画像=7)
この展覧会は、静岡・三島にあるGalleryエクリュの森が企画し、大平實をはじめ国内外から18人の作家が参加した。
6)
7)
やがて「石割式」というセレモニーが開かれた。
えらそうな肩書きのおじさまたちが、大きな石をたたく。(画像=8)
最後にこの施設で活動をする彫刻家の田中毅が石を割った。(画像=9)
街に彫刻が多くある山口県宇部市のように、埼玉県川越市はなりたいそうだ。
アートが求められる場があり、アートの近くに多くの人がいることを実感することができた。
政治不信の世の中だからこそ、自治体にも不安を抱いてしまうが、川越はもちろんのこと、もっとこういうことを行う街や、心意気を持つ人が増えますように。
割れた石をありがたく拝みながら思ったのは、私だけではないだろう。
8) |
9) |
|