topreviews[Tokyo Midtown Award 2009 受賞作品展示/東京]
Tokyo Midtown Award 2009 受賞作品展示


展覧会としてショウウィンドウを眺めてみた

TEXT 藤田千彩


「TOKYO MIDTOWN AWARD」が今年も開かれた。
昨年も今年も、美術手帖での取材のため、私は足を運んでいる。

展示前のショウウィンドウ(一部)
 
「TOKYO MIDTOWN AWARD」最終審査風景
   
平田創《Funky Project 09 Japan Colors》
 
福本歩《六本木未来骨董 フクモ陶器
 
山本麻璃絵《自動販売機のある風景》
 
藤井秀全《Stain “Expanse”》
     

え?知らない?
六本木にそびえる巨大なビル、東京ミッドタウン。
森美術館があるほうじゃなくてサントリー美術館があるビルのほう。
そのビルの地下は、地下鉄六本木駅からつながる通路があり、大きなショウウィンドウが並んでいる。
「TOKYO MIDTOWN AWARD」は、そのショウウィンドウにアート作品を飾るための、コンペティションなのだ。
10月20日の「TOKYO MIDTOWN AWARD」の最終審査も見学した。
“審査”という行為が新鮮に感じた以外、落ち着いて見るという感じではなかった。
そう、あくまでもショウウィンドウ、されどショウウィンドウなのだ。

どういう意味?分からなければまず行ってみるがいい。
普段アート作品を見慣れている美術館は、もっと天井も高いし、線なんてない、いわゆるホワイトキューブ。
一方、ショウウィンドウは天井から床までの高さ、一定の幅に黒い縦線が入っている。
展示する、と一言で言っても、そんなところから制限アリなのだ。
おまけに半年ぐらい作品は置かれたまま、という。
だから「時間が経つと壊れる可能性があるもの」や「劣化したり色が変わるかもしれないもの」は、技術的に厳しいという理由で審査に通らなかった。

まだ設置の準備をしている夜、私はこの地下通路へ足を運んだ。
私が知っているアートというのは、空間を見たことのないものへと変化する、という意味のものだけではない。
へぇ、すごい、びっくり、そういう見方もあるんだ、と自分の持っている価値観を壊すものこそ、アートだと思っている。
だから今回並んだ4つの作品を見ていると、それぞれ違う方向ながら、感動した。

審査結果はさておき、、、
平田創の映像作品は、絵を描くということを実写系アニメーションで表現している。
さささっ、と筆を走らせる感覚は、すがすがしい気持ちよささえ感じるし、こうやって絵って出来上がるんだ、という新鮮さがある。
福本歩の陶器が並んだショウウィンドウは、まさに店舗のよう。
細かく文字を読んで、使い方を理解したり、面白くて笑ってしまったり。
山本麻璃絵が木彫でつくった等身大の自動販売機は、その無骨さにただただ驚かされた。
彫ったり削ったりする手間を想像しただけで尊敬するし、無機質なペットボトルさを再確認してしまった。
藤井秀全の光の作品は、私がこれまで何回か見ていたせいで新鮮さは感じられなかった。
でも地下通路という暗い場所で、あんな光を発せられると、衝撃は歓びに変化する。

通路を通り過ぎるだけでは、審査結果は知らないままだろう。
ましてやそれが「アート作品である」ということにも、気づかないかもしれない。
だがやはりこのショウウィンドウには目を引き、「これは何?」「すごい!」と思わせるものが展示されている。
ショウウィンドウの中に食い入るように見入っている人たちを見ながら、私はアートはこうでなくちゃ、とほくそ笑むのだった。

Tokyo Midtown Award 2009 受賞作品展示
2009年10月23日〜2009年11月3日(それ以降も約半年間展示)

東京ミッドタウン プラザB1F メトロアベニュー展示スペース(東京・六本木)
 
著者のプロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ、東京都在住。
編集作業に命そそぐことにしました。
オシゴトください。→chisaichan@hotmail.com




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