美術鑑賞が一対一の問題だとしたら、美術ライターをしている私は、この
「風景ルルル」展の作家ラインナップに、ゆがんだ気持ちを抱いていた。
本当かどうか知らないが「学芸員は美術手帖を読んで作家を知る」らしい。
美術業界的にはメジャー(もちろん一般社会では誰も知らない)作家ばかりだからだ。
そうは言っても、作品が群れて並んでいる風景はいいものだなと思う。
特にこの(画像=e、f)あたりのように、照屋勇賢や高木紗恵子の作品がある部屋は、木漏れ日が指す窓辺の喫茶店にでもいるような雰囲気だ。
私の家も壁には絵画、机には立体、柔らかな風が吹いていきそうな気持ちになれたらいいのに。
私が東京で「レビューを書きたい」と申し出ても、所属ギャラリーの許可が下りなかった作家も入っている。
どういう基準で作家を選んでいるのかしら?と意地悪く考えてしまう。(画像=g)
「これってどうやってつくってるんですか」
カップルの彼氏が、美術館監視員のお姉さんに尋ねている。
あたかも「コーヒー2つください」と言っているような声だった。
そう、照屋の作品は不思議。
樹木を立てているように、一枚の紙袋の中をこまやかに切ってつくっているとわかっていても、本当にそれが出来るの?という気持ちも生まれる。
久しぶりに
佐々木加奈子の作品も見た。
3分40秒の映像作品に、ちらっと見るのではなく見入ってしまう。
他の女性2人もそう。
私がつい深いためいきをついたら、彼女たちも「ふーむ」と言っていたのが面白い。
作品という木々の間を散歩していくうちに、私のゆがんだ気持ちは薄れていった。
面と向かって話してはいないが、会釈や目を合わせるときのように他の鑑賞者と小さな交流をしていくことも楽しかった。