topreviews[目黒の新進作家−七人の作家、7つの表現 /東京]
目黒の新進作家−七人の作家、7つの表現


個性が光る、7つの星(スター)
TEXT 藤田千彩

東京23区のいくつは、区立の美術館を持っている。
目黒区はその一つで、JRや東京メトロの目黒駅と東急東横線の中目黒駅の間くらいに、目黒区美術館がある。

今回展示しているのは、私と同世代の70年代生まれの作家だ。
現在30代の彼らを「若手」と呼ぶかどうかは、私には気恥ずかしさも手伝って断言できない。

サブタイトルにあるとおり、参加作家は7人。
中でも私が心にひっかかった3人を取り上げたい。

A
B
C

東亭順は、空をモチーフにしたペインティングの作家だ。
今回の展示は、美術館という天井高で壁の広い空間を生かした、
大きな作品2点と、小品を散らばめた。(画像=A)絵画作品は源生ハルコも出しているが、(画像=B)東亭の場合は部屋を囲むようなせいもあり、ゆっくり作品に包まれているような感じがした。
今回の展示では、階段を使ったインスタレーションが印象的だ。(画像=C)
上を見上げるとオーガンジーの布が重ねられ、
天井の蛍光灯などの光を利用しているせいか
その層のはざまに、いくつものビーズが入り込んでいるのが見える。
空を見やると、きらめいたり、揺らいでいる。
このインスタレーションを見て、絵画作品を見ると、
東亭が見せたい空は、重なった層や空気で出来た空なのだと思う。
インタビューで「塗るたびに磨く」と言っていたけど、
重ねる塗りは、合わせ重なったオーガンジーと同じ意味なのだろう。
表面だけでは見切れない、深さをもう少し知りたい。
鈴木康広の作品《まばたきの葉》(画像=D)は、子どもたちが喜びそうな作品だ。
目がプリントされた葉っぱ状の紙を、ポストのような入れ口に入れると、
柱みたいな筒、それはあたかも背の高い木のような、その最上部から紙が吹き出されていく。
上から降ってくる紙は、くるくるしながら舞い降りる。
プリントされた目は、まばたきをしているように落ちてくる。
床に落ちた紙を拾い集め、またその入れ口に入れ込む。
筒みたいな機械の構造も不思議だが、上から落ちてくる紙の表情が面白い。
我を忘れて、しかも2回、3回とするたびに強欲になって、
もっと葉っぱを入れたい、もっと舞う紙を見たい、と思う。
作品をもっと楽しみたい、とも思う。
D
 
 
 
 
E
 
 
 
 
 
 
F
G

そして石川直樹の写真。(画像=E)
同じく写真を展示する野村恵子(画像=F)とつづくような部屋で、
石川の写真は発色のよさと景色が目を引いた。
日本で見たことのない景色を撮るということは、
個人的には時代遅れの手法だと思ってしまう。
こうして並べられると、
見たことがないから面白いのではなく、
普段見ている建物や景色の新鮮さがないことに気づく。
見慣れることのこわさ、つまらなさを知ってしまう。
そして石川の視点、見落としてしまいそうな細部やくすっと笑いたくなる建物の表情、
日常の風景にも気づかなかったことがあったのだろうか、と再認識させられた。(画像=G)
I

ほかに、瀧健太郎(画像=H)、屋代敏博(画像=I)があった。
どれも個性的な作品が並ぶ展覧会だった。
これからも同世代として応援していきたい、と私は誓った。


目黒の新進作家
−七人の作家、7つの表現


目黒区美術館(東京都目黒区)
2007年12月4日〜2008年1月13日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がけていた。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」などでアートに関する文章を執筆中。
chisaichan@hotmail.com




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