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VISIONS −増殖するイメージ−名和晃平・廣澤仁・元田久治・山田純嗣


そこはデパートです
TEXT 藤田千彩

A
 
地下鉄で日本橋高島屋へ行った。
エスカレーターの脇に「高島屋美術部 創設百年」という像があった。(画像A)
「高島屋美術部は、平成20年(2008年)、創設百年を迎えます。」とプレートには書いてある。
なんだそれは!!と6階にある、美術画廊へ駆け込んでみた。

日本橋高島屋の美術画廊は、大きく3つのスペースに分けられている。
画壇と呼ばれる人たちの絵画や彫刻などの発表の場、陶芸などの工
芸を扱う場、そして私が今回取り上げるのは、現代美術を紹介する場として去年3月に作られた「美術画廊X」での展示だ。

「VISIONS −増殖するイメージ−」とタイトルが付けられた展覧会では、
4人の作家による版画作品が紹介されている。

B
C
D
E
F

入ってすぐ、山田純嗣の経歴と大きな作品《GARDEN》が掛けられていた(画像B)。
山田は1974年生まれ、私と同じ年の人が活躍していることにうれしくなる。
隣には、4枚組の《FOREST-ANIMALS》、1点モノの《FOREST-ANIMALS》(画像C)。
足元でインスタレーションされている小さな立体は、というと、これら作品のモチーフらしい。
キャプション(画像D)にある「インタリオ オン フォト」というのは、
山田による造語およびオリジナル技法で、立体を撮った写真をもとにした版画のことらしい。
たしかに立体(画像E)と平面《FOREST-ANIMALS》(画像F)は似ている。
G
H

続いて1976年生まれの廣澤仁、
これが版画?と思わせる、キャンバス仕立てのような支持体の厚み。
シルクスクリーンと書いてあるが、油彩画と言われても納得してしまうだろう。
《かまいたち》(画像Gの右)、《夜》(画像Gの左)、そして《うたかた》(画像H)。
画面に塗られたように盛り上がるインク、その発色のよさにも驚かざるを得ない。

I
J
K
 
L

3人めは、森美術館「六本木クロッシング」にも出していた名和晃平。
1975年生まれの名和は、版画作品5点(画像I)と
ミクストメディアである《PixCell》シリーズ(画像J)を出していた。
《PixCell》はビー玉のような透明なビーズをモノの表面に張り付けている作品(画像K)で、
今回の展示ではトランプ、かるた、花札の表面に透明な粒々が光っている。
シルクスクリーンの作品《Element》や《Chips》(画像Lの右)、《Hair》(画像Lの左)も、
その粒々のような、点で表現されている。
M
N

ぐるっと会場を一周した最後は、1973年生まれの元田久治。
リトグラフや銅版画といった、版画の中でも緻密な表現ができる技法を使っている。
細やかに、アイロニカルに、巧みに、衝撃的な画面が目を奪う。
画像Mにある3点は、日本橋界隈の景色だ。
右が《Indication - Nihombashi》、左上は《Indication - ASAHIBREWERIES,BLD》、
左下は《Indication - The Kaminarimon Gate》。
うまいね、と一言で片付けられないのが元田の作品だ。
《Indication - Electric City》は、秋葉原と思われる街が破壊されている。
ずたずたになった街は、同年代の私も幼少から見てきた
アニメーションの世界のようでもあり、
モノクロームの色彩は、楽しさにあふれる町が秘めている暗さを示しているようだった。
O
P

奥に広い長方形をしているギャラリーを見ていると(画像OとP)、
ここがデパートであることを忘れてしまう。
デパートであるということは、「買う」という目的に自由であるということ。
ギャラリーは敷居が高く、入りにくい。
それがデパートなら、服を買うように美術品を買うことができる。
それが私もあなたも大好きな現代美術だったら・・・。

インターネットは便利である。
動かなくても情報を手に入れられることができる。
このテキスト(情報)を読んで「へぇっ」とつぶやいた、読者の皆さん。
果たしてそれでいいのだろうか?
現代美術はデパートにあるのだ、ネットにあるわけじゃない。
さあ、読者の皆さん、デパートへ出かけよう!


VISIONS −増殖するイメージ−
名和晃平・廣澤仁・元田久治・山田純嗣


日本橋高島屋 美術画廊X
2008年1月9日〜29日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がけていた。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」などでアートに関する文章を執筆中。
chisaichan@hotmail.com




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