topreviews[伝統と現代 延承、演繹、浸透 水、墨、モノクロームの世界/東京]
伝統と現代 延承、演繹、浸透 水、墨、モノクロームの世界

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中国現代美術の、勝ち!?
TEXT 藤田千彩

中国の現代美術が元気いい。
それは一部のウワサではなく、テレビでも見たし、中国現代美術に関するシンポジウムでの話で私が感じたことだ。
実際どうなんだろうと、すぐさま中国に視察に行くことはできないから、今回のイベントを見に行った。

私の感想では、中国人のほうが面白い、である。

本展覧会のタイトルにも使われている「浸透」を作品タイトルにした、朱金石の作品(画像=A)。
入口にある大きな箱。
書道に使うような紙が重ねて入っている。
どのくらい紙が入ってるのだろうと、箱をのぞきこむと、箱には墨が入っていて、紙に「浸透」している。
墨独特のにおいもあり、水墨画の中国、とすぐ合点がいく。

魏青吉、劉慶和の絵画も面白かった。
魏はポップに墨を使い、西洋の文化を揶揄している表現が特徴だ(画像=B)。
劉はうすく墨を用いて、顔などを描く。東京都現代美術館で見たマルレーネ・デュマスを思い出した(画像=C)。

日本人は、というと、ノーヴァヤ・リューストラの《TORICO 2007_Tokyo》というインスタレーションは圧巻だった(画像=D)。
竹炭らしいが、粉状の炭でスペース一面に模様を描いている。

高浜利也が並べた小さな家たちも気になった(画像=E)。
しかも家をたどって屋上へ向かう階段を昇り、板でふさがれた窓の隙間を覗いた。
その覗き見をする感覚は、本当は並べられた家の中を覗かれている感覚なのかもしれない。

いくつが画像を載せておくが、ビデオ、インスタレーション、と表現も多岐にわたっていた。
タイトルや全体の印象では地味であるが、そんなに偏った作品はなかった。

私が一番ひっかかった中国人を紹介しよう。
張羽の映像インスタレーションは、一見なんのことか分かりにくい(画像=J)。
《指跡-2007.10》というタイトルを見て、ああ、指をこの長い紙に押しているのか、と分かった。
まるではんこを押すように、指を押し当てている、何度も、ずっと、細かく。

中国現代美術に関するシンポジウムで話していた中国人キュレーターの人が、「私たちはアリのように細かく働く」と言っていた。
張羽の作品のように、中国人は私たち日本人より努力家なのかもしれない。
それが何億人といると思うと、あっさり日本人の負け、と言いたくなる。
この展示を見て、日本の現代美術作品についてちょっと不安になった。

伝統と現代 
延承、演繹、浸透 水、墨、モノクロームの世界

旧坂本小学校(東京都台東区)
2007年11月3日〜30日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がけていた。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」「美術手帖」などでアートに関する文章を執筆中。
chisaichan@hotmail.com




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