topreviews[児玉賢三展/東京]
児玉賢三展





自然がうかぶ

TEXT 藤田千彩

天井から吊られた服は、花や種から出来ていた。
植物が移動する手段である、空中にただようさまにも見える。
柔らかなたんぽぽの綿毛やデザインされたボタンのようなポピーの種で、服という形を作り出している。
単一の材料だけで、単純に服を形作っている。

すでに摘まれて、すでに枯れているものであるはずなのに、使われている植物たちには悲しみはない。
むしろ生かされている。

児玉賢三の作品は、やさしい。
ファブリックとか、素材とか、ややこしいことは感じない。
しかし実際に着ることはできないだろう。

服は着るため、でなくてもいい。
植物は次世代をつなぐために、種を残すのではない。
やさしさの中には、複雑な思いが閉じ込められている。

児玉賢三展

NPO法人アート・インタラクティヴ東京(東京都港区)
2007年6月4日〜13日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/

 


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