|
|
自然がうかぶ
TEXT
藤田千彩
天井から吊られた服は、花や種から出来ていた。
植物が移動する手段である、空中にただようさまにも見える。
柔らかなたんぽぽの綿毛やデザインされたボタンのようなポピーの種で、服という形を作り出している。
単一の材料だけで、単純に服を形作っている。
すでに摘まれて、すでに枯れているものであるはずなのに、使われている植物たちには悲しみはない。
むしろ生かされている。
児玉賢三の作品は、やさしい。
ファブリックとか、素材とか、ややこしいことは感じない。
しかし実際に着ることはできないだろう。
服は着るため、でなくてもいい。
植物は次世代をつなぐために、種を残すのではない。
やさしさの中には、複雑な思いが閉じ込められている。
|
|