マーブルは目に入れて
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藤田千彩
その場所は、代官山にあるTシャツなどを扱うショップである。
代官山のギャラリー、と聞くとオシャレなイメージだけが先行するが、こうしたショップの中にあることも珍しくない。
今回私が見たHANJIROというショップでの倉岡一誠の作品のみならず、ショップにおけるギャラリーの作品は、インテリアのひとつのように、また、扱われているウェアと統一感あるイメージとして、ショップに彩りを添えていることが特徴である。
倉岡の作品は、入ってすぐの右手の壁に3点掛かっていた。
協賛を得たセメダイン(接着剤)は丸い碁石のような形になっていて、赤紫の色がつけられている。
色は丸全体にあるわけでなく、ひとつひとつグラデーションや濃淡が違う。
そんな小さな丸は整理されて敷き詰められて、ひとつの画面を構成する。
遠くから見るとぼんやりとした抽象絵画のようだが、近づくと個々の色の付き具合が違うことで、ドットやピクセルの粗いデジタル画像を想起させる。
濃淡やグラデーションが違うが、基本的には赤紫単一の色、そしてある一定の数の多さときれいな配列により、ごちゃごちゃしていないシンプルさに安心感を得るのだ。
爪に塗られたマニキュアのように、つい指先でもぎとってみたくなる感覚。
垂れて溜まっている水滴のように、フッと吹いてみたくなる感覚。
そして気持ちよくなる透明さと輝きを保つ美しさ。
チープな素材でシンプルな作り方のはずなのに、普段求めても手に入らないぜいたくな感じを得られることが不思議だった。
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