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永井桃子展

左)『光途―日々』 2006年 油彩 97.0×130.5(F60号)右)『光途―窓から4』 2006年 油彩 80.4×100.0(F40号)


やわらかな表情
TEXT 藤田千彩

 

『光途2006―ドローイング5』 2006年 油彩 23.0X31.0(紙)

DMで見たときと、実物を見たときの「違い」。
それはよくあるし、だからこそ本物を見るべきなのだろう。

永井桃子の作品もそうだった。
写真あるいは版画のような、のっぺりした感じを、もらったDMから受けた。
受けた感覚に違和感を覚える。
この目で見てみないと、という衝動が走った。

小さいながらも開放的なギャラリースペースに、植物を描いた作品が並ぶ。
光が差す窓に近いほど、植物は明るく(黄色が多く)描かれているようだ。
気のせいか、描かれている植物が光を求めているように見える。
応えるように淡い午後の光がギャラリーにあふれていたけれど。

観葉植物のような、つまり自然にあふれる植物ではなくて、庭先や家の中にあるような草や花。
画面が大きいけど、部屋においてあるものと変わらない気がする。

のっぺりしていると思ったのは、その画風のせいであって、実際の作品はさほどでもない。
とくに花を表現したものは、大きなとらえかたではっきりした陰影がつけられているせいかもしれない。
やわらかな表情を見せる植物は、見ている私の気持ちも安定させてくれる。

じゃまものがいない、花なら花、植物なら植物、を表現しているところは気持ちいい。
ギャラリーもひとりじめだった。
さわやかな光の中、蜂などの虫のように画面を移り歩きながら、ぜいたくな散歩をしたような気持ちになった。


永井桃子展

ときの忘れもの(東京・南青山)
2006年5月26日〜6月3日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/




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