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現代の造形-Life&art-「酔いのかたち」展


お酒に酔うように美術作品に酔う春の宵
TEXT 藤田千彩

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展示風景
最近、めちゃめちゃお酒に酔う。
楽しかろうと、気持ち悪かろうと、酔ってしまう。
「お酒に酔う」というのは、自分という意識あるものが、お酒によってどこか違う世界へ持って行かれてしまう気がする。
それは自分が普段生活している世界から、美術作品を見ることで別世界へ引き込まれてしまうような感覚と似ている。
そんな展示が、広島県の酒どころでもある東広島市の東広島市立美術館で見ることができた。
車で行くと、「え?」と過ぎてしまいそうな小さな小さな美術館に、21人もの作家が参加している。

ばんばまさえの《浮》は、ほんのり頬を赤らめたようなピンク色のオーガンジーが、酔って浮き足立ちになったように地面から少し浮いたような立体作品。
楽しいお酒はこういう気持ちがたくさん増殖して、私も周りも幸せにする・・・そんなことを思う。(a.b)

山口晃が描く《すずしろ日記》などの、緻密でそしておもしろい日記風絵画に酔う。
あたかも自分が山口になったように楽しめ、一緒に笑い見ることができる、素敵な酔いだ。(c)

和田拓治郎の《未熟者》は、お酒を自分で注ぐ姿を模した彫刻。
骸骨のように見える人間は、少し愛嬌があり、少しせつないかんじがするが、それは「未熟者」ゆえか。(d)

作品も楽しくなってきたら、伊庭靖子のやわらかそうなふとんが描かれた《untitled》でおやすみなさい。
本当に気持ちよさそう・・・。(e)

その他、階段には柴川敏之のペコちゃんの作品がゆらゆらアタマを振っていたり、2階には酔っ払って視界が漠然となったときのような風景を映す佐古昭典の《Happy Hours》など展示されていた。
美術館入口には一升瓶が、窓ガラスを覆うように並べられていたり、古い熱燗の機械などお酒にまつわる資料作品もインスタレーション作品として見ることができる。
心地よい酔いを感じることができる。

野外にあるのは、原仲裕三の《TWINS MOCA 0061》。
看板は中村政人のような企業の真似ではないが、どこかで目にした色とロゴのような気がする。
ちなみにこのプレハブみたいな建物自体が原仲の作品で、中に殿敷侃、太田三郎、柳幸典らの作品が並んでいた。(f)

見たあと、一緒に行った仲間たちが頬を赤らめながら、「面白かったね」と口々に言っていた。
まるで、楽しい飲み会が終わったときのようだった。




展覧会フライヤー
現代の造形-Life&art-
「酔いのかたち」展


東広島市立美術館
2006年2月10日〜3月19日
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/




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