top\reviews[黒木美希展/東京]
黒木美希展

●左/「文様の譜/2006/VIII-#c4」 ミクストメディア 84.2×67.2cm 2006年[+zoom]●中/「文様の譜/2005/II-#b15」 ミクストメディア 104.5×81.5cm 2005年[+zoom]●右/「文様の譜/2004/IX-#3」 モノタイプ 125×130cm 2004年 [+zoom]

わたしなりの見方
TEXT 藤田千彩

●上下/会場風景
最近、絵画はつまらないけど、版画は面白い。
勝手な思い込みかもしれないが、実際見ているとそう感じることがある。
「誰かの真似」みたいな絵画が多い反面、版画作家は自分なりの表現方法を模索している気がするからだと思う。

重ねられた絣(かすり)や麻のカーテンのような、布(ファブリック)みたい。
最初そう思った。

「時間の標本」や「文様の譜」と名づけられた作品。
たしかに、定期的に刻まれたものが集められ、模様が並べられている。
私はそんな単純なもので片付けられない気がした。

作品の前で、近づいたり遠ざかったり動きながら考えた。
私と年齢が近いから、言葉にならない感覚的なものが近いのかな?
一見暗そうに見える色だけど、私は好きだな。
でも待て、これってどうなってんの?
版画って言ったよね・・・。

私は自分で「版画」という言葉にとらわれていることに気づく。
彫って、刷って、という版画の意味にこだわっていたような。
黒木の作品は、そんな単純じゃあない。
木版やゼロックスコピーを使い、和紙を用い、コラージュしている。
そのこだわりを持った表現方法がひとつの形となったとき、奥深さを感じる。
表面で見える部分だけが美しさを求めるのではない、と思う。
重なった部分の面白さもある。
どうしてこの「重なり」という「過程」を経て、これが「作品」という「結果」であるのか。
「時間の標本」という名の通り、重ねられた時の蓄積が、黒木の作品。
きっと来年、5年後と時を経て作られていくと、また違う深まりをしていくのだろう。
「文様の譜」も、日ごろ使っている言葉の寄せ集めなのかもしれない。
話す、書く、伝える、そんな言葉を刻んでいるように見えてくる。
勝手にそう思ったが、私なりに黒木の作品に見えてきたものがあった。
ちょっとすっきりした。


黒木美希展

シロタ画廊
東京都中央区銀座7-10-8
2006年1月30日(月) - 2月10日(金)

黒木美希(くろきみき)
1973   京都市生まれ
1998   京都精華大学大学院版画分野修了
1995   中華民国国際版画素描ビエンナーレ[台北市美術館/中華民国]
スロバキア国際木版トリエンナーレ[スロバキア]
黒木美希さん 
1997   ザイロン国際木版画展[スイス]
クラコウ国際版画トリエンナーレ[ポーランド]
1998   神奈川国際版画トリエンナーレ[神奈川県民ギャラリー/神奈川]
2003   版の思考・版の手法 2003 [愛知県美術館ギャラリー/愛知]
2004   文化庁買上優秀美術作品披露展[日本芸術院会館/東京]
関西現代版画の開拓者と新世代たちの「版画の力」[京都文化博物館/京都]
2005   メキシコ-日本 in グアナファト現代版画交流展[グアナファト大学/メキシコ]
 
著者プロフィールや、近況など。

藤田千彩(ふじたちさい)

1974年岡山県生まれ。
大学卒業後、某通信会社に勤務、社内報などを手がける。
美学校トンチキアートクラス修了。
現在、「ぴあ」「週刊SPA!」などでアートに関する文章を執筆中。
http://chisai-web.hp.infoseek.co.jp/




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